第104話:魔王城へ帰還

 レイド達は一度魔王城へと帰還していた。

 魔王城に戻ってすぐ、フランはベノムへと尋ねた。


「ベノム。妾が行っている間何か異変などはあったか?」

「特に異変などはありませんでした」


 ベノムは「ですが」と続けた。


「北方より敵軍が攻めてきましたが、バルザーク殿が対処し、殲滅したとのことでした」


 ベノムの報告を聞いたフランは安堵の息を漏らす。

 俺はベノムに尋ねる。


「それはつまり、俺達が王国を攻めている隙を突いて、侵攻してきたということで合っているのか?」


 レイドの言葉にベノムは頷いた。

 つまりはそういうことだ。


「攻めて来たのはどこの国か判明しているのか?」

「はい。神聖国の軍勢でした」


 魔王軍が次に攻めようとしていた国だ。


「規模も少なく、どうやら、攻められるかの探りを入れてきたようです。殲滅されたので、向こうは連絡がつかず、何があったのか察したでしょう」


 ベノムはフランへと向き直る。


「魔王様。戻られたということは、もしや王国は?」


 フランは頷いた。


「王国は魔族の手に落ちた。周辺の街々も完全に落とし、王国全土は魔族のものだ。次に攻めるのが、魔王の不在を突き、侵攻してきた神聖国だ」

「王国攻略おめでとうございます。勇者はいかがなさいましたか?」

「勇者はこちらに落ちた。今では王国の統治を任せてはいるが、側に監視も付けている。魔剣も扱えないようにレイドに管理を任せている」


 ベノムが「本当に大丈夫なのか?」的な視線をレイドへと送っていた。

 肯定したレイドは口を開く。


「安心しろベノム。ラフィネのところには手練れの魔族がいる。それに聖剣を持たない勇者は魔族からしたら雑魚当然だろう?」

「確かに聖剣を持たぬ勇者は弱い。ではレイドを信じるとしよう」


 そこからレイド達はカスタール神聖国をどうやって攻めるのかの作戦会議を始めた。


「ベノム。今魔王城に残っている戦力はどのくらいだ?」


 少し考えたのち、ベノムは答える。


「そうですね……集めたら一万に届くかと」

「一万か。四天王は誰が出られる?」

「私は魔族領の防衛を魔王様から任せられました。出ろと言われれば出ることも可能です。他にはイリーナもおります」

「うむ。バルザークはライネール王国を任せてきた。出すとすればリリスだろうな」


 フランの視線がリリスへと向けられる。


「問題ありません」

「なら俺も行こう」

「レイドも?」


 リリスがレイドのほうへと顔を向けた。


「む? れ、レイドも行くのか……?」


 寂しそうな表情をするフラン。


「ならミレーティアもレイドお兄さんについていく!」


 近くの椅子に座ってお菓子を食べていたミレーティアが、話を聞いたのかついていくと言い出す。


「まあ、カスタール神聖国は任せてくれ。すぐに落として戻る」

「……うむ。じゃが、何があるか分からない。先行部隊を送り込み、戦力を探ってからだ。いいな?」


 頷くレイド。


「リリス。よろしく頼んだ」

「任された」

「リリスお姉さん、よろしくね!」

「ん。ミレーティアの働きを期待している」


 優しくミレーティアの頭をなでるリリスに、気持ちよさそうに目を細めるのだった。




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