第102話:次に向けて

 満足に頷いたフランは、声を増幅させる魔法を使用し王都全体に通告した。


『我は魔王フラン・ヴィレアーレ。王都は魔族の手に落ちた。今この王都にいる貴様ら人間は、これより我ら魔王軍の傘下に入ってもらう』


 その言葉に王都全体にどよめきが広がる。


『人間共に選択をさせよう。貴族に復讐したい者、それらに我ら魔族は手を貸そう。この国の貴族は他の街や国に逃げた。そいつらを殺す機会を与えてやる』


 その言葉に声が聞こえてくる。


「俺は貴族に彼女を奪われた……!」

「私は夫を殺された!」

「俺は妻と息子を殺された!」


 次第にスラムの住人からも声が上がってくる。


「汚いってだけで仲間が殺された!」

「少しぶつかったからと殴られた!」

「親友は目が合ったからと目の前で殺された!」


 憎しみと恨みの声が王都に広がって行く。


 笑みを浮かべるフラン。


『復讐したくないか? このように扱われて悔しくないか?』


「悔しいに決まっている!」

「殺してやりたい!」

「復讐したい!」


『ならば、我らと共に戦おうではないか! 褒美は復讐と、貴様らの人権だ!』


 大気が震えた。

 そう錯覚するほどの歓声。

 次第に聞こえてくるのは……


「魔王様、万歳!」

「魔王様、万歳!」


「「「魔王様、万歳!」」」


 魔王コールが王都に響き渡る。


『復讐者達よ、今こそ立ち上がれ!』


 そして「うおぉぉぉぉぉお」という歓声が轟いた。


 フランは言い終わると満足そうな表情でレイドへと振り返った。

 その表情は何か言って欲しい様だ。


「よくやった。想像以上だった」

「うむ!」


 頭を撫でてやると、蕩けそうな表情になる。


「レイドお兄さん私も!」

「なら私も」


 そこへミレーティアとリリスが加わってくるのだった。



 一ヶ月が過ぎた。


 近隣の街々はすでに魔族の支配下に堕ちていた。

 復讐を成した者もあり、気が晴れていた。 


 王都の住民や元スラムの者達は、それぞれ決められた場所に住んでいる。

 貴族街は魔族の幹部達などが占拠しており、王城は魔王であるフランが住んでいた。


 ラフィネは使える人材を集め、内政に取り組んでいる。


 農業を元スラム住人達に農民が教えるなどして、食料確保も着々と進んでいた。

 警備に関しては魔族が行っている。


 最初は少しびくびくしていたが、一ヶ月経った今では慣れてきているようだった。

 魔族側も威張り散らしていたが、彼らが今まで相手にしてきた人間達よりも善良だからか、少し打ち解けているようだった。


 そんな様子を王城、もとい第二の魔王城から眺めるフランとレイド。


「孤児院の方はどうなっている?」

「問題ないようだ。ラフィネが上手くやっているようじゃ」

「そうか」

「魔王城の方は?」

「そちらも大丈夫。アイーネから「人間の進軍も今は収まっており、こちらで対処可能」と言っていた。しばらくしたら防衛線を作ってこちらに兵を回すと言っていた」

「そうか。なら良かった」


 二人は空を眺める。

 そこへレイドが。


「次は隣のカスタール神聖国だな」

「じゃな」


 こうして次の戦闘に向けて準備を始めるのだった。



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