第101話:王都の再生

「……分かったわ。その代わり、魔王、約束して」

「何をだ勇者?」


 ラフィネに言われフランは見つめた。


「人間達を無下には扱わないで」

「そんなことか。言ったであろう? 壁で隔てると」

「そう。それで、従属国になった私達に、何をさせるつもり?」


 フランは怪しく嗤った。


「なに、簡単な事だ。他国の人間達が攻めて来た時に、戦場に出てもらうだけだ」

「――ッ!?」


 つまりは壁になれ。そう言うことだった。


「魔王、それでも王なの!?」

「王とは民を想う者であろう? 妾とて同胞を守りたい気持ちは一緒だ。言っとくが、これはどちらかが滅びるまで行われる戦争だ。どうせ貴様ら人間も魔族が負ければ隷属させるか、皆殺しにでもするのであろう?」

「そ、そんなことは――」

「ない、とは言い切れまい。違うか?」

「………………」


 尤もな言葉だった。


 そもそもこれは、種族の存亡が懸かった戦い。

 負ければ淘汰され、人権はない。


ラフィネもそれは理解しているようだった。

 これはそんな人間と魔族の、種族の命運を賭けた戦争なのだということを。


「……分かったわ」

「うむ」


 それからラフィネには説明が為されるのだった。


 夜が明けた早朝。


 王都にいた人間のほとんどが逃げ出していた。

 猶予を与えたのだから、当然の結果だ。


 僅かに残っているのはスラムの貧しい人間のみ。

 瞳からは生気が感じられない。


 出て行った貴族達の屋敷で、子供達が食べ物や金銀財宝を漁っていた。


 一言で表すなら、とても悲惨な状況だ。


 瀕死の貴族に向かって、石を投げている者までいた。

 相当嫌われていたのだろう。


 孤児院の人間はスラムの人から守ろうと必死になっている。


「酷いな」


 それはフラン達魔族の誰もが思った事であった。

 ラフィネがやめるように言うも、そんな言葉は耳に入っていない。

 そこへレイドが口を開いた。


「これだと壁は要らないな」

「じゃな」


 フランが同意し頷いた。リリスやミレーティアも同様に頷いていた。


「フランにリリス、バルザークに提案なんだが……」


 レイドはある提案を持ちかけた。

 それは……


「こいつら、魔王軍に取り入れないか?」

「……どういうことだ?」


 バルザークが聞き返してきた。


「こんだけ貴族に恨みを持っているんだ。住む場所と食料を提供し、戦力になってもらうんだよ」


 そう言ってレイドは笑みを浮かべた。


「なるほどな、それは良い考えだ。ではまずは、建物を修復しようか」


 フランがそう言った直後、空に王都を覆うほどの巨大な魔法陣が展開された。

 突然の事態に驚きパニックになるスラムの人々。


 魔法陣の輝きが増し、崩壊した建物が修繕、いや――再生されていく。


 しばらくして魔法陣が消え、残ったのは戦いに巻き込まれた貴族達の死体と、驚きの表情で固まっているスラムの住人達であった。



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