第99話:復讐を成した今、目指すのは

「では王都をどう扱うかについて、誰か案を」


 フランのその言葉で会議が行われた。


「人間共を殺し、この王都を拠点に先ずはライネール王国を完全に落としてはいかがでしょうか?」


 そう提案をしたのはバルザークであった。


「ふむ。悪くない案だが、人間共を殺すのは却下だ」

「何故ですか? もしかして……レイドに何か言われたので?」


 バルザークや他の幹部達がレイドを睨む。

 中には威圧する者までいるが、レイドはそれらを受け流す。


「違う。レイドではない。私だ」

「……どういうおつもりで?」


 レイドへと威圧が消え、全員がフランへと視線を向けた。


「無駄な反感を買わないためだ」

「逆らったら殺せばいいのでは?」


 尤もな意見である。


「それも悪くない。だが、いずれ魔族がこの地を支配するならばそれは出来ない。だからみんなに提案だ。ここからはレイドに託す」

「わかった」


 そう言ってレイドは一歩前に出た。


「どうするつもりだ?」

「今治療させている勇者を使う」


 疑心の目が向けられる。


「この国の王はいなくなった。そこで勇者をこの国の王にさせる」

「勇者をか?」

「そうだ。もちろん首輪はさせ、魔族も駐屯させる」

「レイド、聖剣はどうなった?」


 バルザークはシュトルツに取り込まれた聖剣のことを尋ねた。


「聖剣は先の戦いでボロボロにはなったが健在だ。収納魔法に入れて保管してある。何なら王城の宝物庫に保管しても良い」

「回収してあるなら問題ない。だがこれだけは聞かせろ。勇者が拒否したら?」

「殺す」

「……なら勝手にしろ」


 バルザークは目を閉じ黙った。

 どうやらレイドに任せるようだ。


「王都の一部を魔族で占領する。軍の駐屯として使えるようにすればそれでいい。人間達とは壁を作れば良いだろう。口で文句を言うなら別に構わないが、少しでも攻撃してきたなら殺したっていい。それでみんなは文句は無いな?」

「政治はどうする?」

「勝手にさせとけ」


 誰も何も言わなくなった。

 どうやらそれで良い様だ。


 今回の件をまとめると、人間と魔族の住む間には壁を作り隔てて干渉を避ける。政治は人間と魔族で行うも、基本的に魔族の指示に従うこと。勇者を王にすることで、民をある程度安心させる。

 王都の門の管理は基本的に魔族が行う。これは情報の流出を防ぐのが目的だ。


 とまあこんな感じで決まった。

 王都には貴族が居たが、ほとんどが他の街へと去って行った。


 早い奴は他国に逃げるだろう。


 現在残っている貴族に、反発すれば殺すことも辞さないと言ってある。


 最後にバルザークがレイドに質問した。


「レイド、復讐を成した今、何が目的だ?」


 レイドは一言、簡潔に答えた。


「――フランと俺、そして魔族の幸せな世界だ」



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