第98話:ちょっとしたイチャつき

 ドラゴンの背に乗って、王都の外へと避難した本隊と合流することに。

 移動の最中、フランが尋ねてきた。


「人間共と何かあったのか? 話しているようじゃったが?」

「助けたのが俺だと分かった途端に罵声を浴びせられたからちょっとな」

「……なるほど」


 後ろを見て納得がいったのか、フランは頷いた。


「レイドもお疲れ。それと魔王様、この後の予定は?」


 リリスの言葉にフランは答えた。


「この後は王都の外で一日待機する。朝までに王都をどうするかを話し合うことにしよう」

「わかりました」

「レイドもこれで良いか?」

「フランがそれでいいなら俺に文句はない。好きにするといい」

「うむ。復讐はもう良いのか?」


 使わなくなった仮面を外し、王都を見下ろしてからフランへと向き直る。


「ああ。もう復讐は済んだ」

「そうか。他の人間共は良いのか?」

「あんな奴等、気にしてたらキリがないからな。ほっとけばいいさ」

「わかったのじゃ」


 しばらくして避難場所へと戻ってくると、ミレーティアが飛びついてきた。


「おかえりなさい!」


 そのまま抱きしめるも、先の戦闘で消耗しているレイドは少しバランスを崩した。


「……レイドお兄さん、大丈夫?」


 抱き着いたまま、心配そうに見上げてくるミレーティアに、レイドは笑みを浮かべる。


「ああ、少し疲れただけだ。大丈夫」


 ホッと肩を撫で下ろすミレーティア。


「ミレーティア、そろそろレイドから離れるのじゃ」


 抱き着いたままのミレーティアへと、そう告げるフラン。

 その表情は少し羨ましそうにしていた。


 フランは自分が抱きつけなくて、むーっとしている。


 流石にこのままだと不味いので、ミレーティアを引き離す。


「どうしたの?」


 疑問符を浮かべるミレーティア。


「そろそろみんなを集めてこれからの事を話さないとだからな。それに……」


 そう言ってレイドは辛うじて生きているラフィネを見た。


「なんだかんだでまだ生きているから、使ってやろうかと」

「ふ~ん」


 瀕死のラフィネを見て、つまんなさそうに答えた。


「リリス、コイツの治療をしてやれ」

「……いいの? このまま殺せば?」

「話を聞かないとだからな。流石に俺もここまでやってくれた勇者を殺すのも心苦しい」

「そうなの? ほっといても死ぬよ?」

「まあ、いいから治療してやってくれ」

「……分かった」


 不満そうにするリリスに、レイドは「助かる」と伝えた。

 すると、少し頬を染めながら「うん」と頷き治療をするため、人員を集めに小走りで向かって行った。


 そして急ぎ幹部を招集し、これからの事を話し合うことになるのだった。




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