第91話:真の魔人Ⅰ
レイドは一瞬でシュトルツへと迫り、その腕を斬り落とした。
が、一瞬で再生される腕。
「チッ」
厄介な再生能力を前に、舌打ちをするレイド。
反撃とばかりに斬りかかるシュトルツだが、魔剣にてその軌道を逸らし華麗に回避する。
魔剣の力の一部を自身へと取り入れたレイドの身体能力は、飛躍的に向上していた。
だが、限界突破までの恩恵は受けられないが。
シュトルツは迫り剣を振るう。
全てを弾き回避する。先ほどよりもシュトルツが受ける攻撃が増えて行く。
逆に今度はレイドの受けるダメージが、斬り結ぶにつれて徐々にだが、確実に少なくなってきていた。
そんなことがあってか、シュトルツはイライラしていた。
「クソッ! 何故だ! 何故魔人となったこの私が、人間風情に押されているのだ!」
「ならそれが魔人の限界なんだろう。お前が魔人になってもその程度ってことだ。自覚したか?」
「低俗な人間如きがぁぁぁぁ!!」
斬り結んでいたシュトルツの魔力が膨れ上がった。
それに乗じて剣速が速く、重くなって行く。
それでもなお、レイドが変わらず優勢だった。
怒りのせいか、シュトルツの攻撃が徐々に大雑把になっていく。
大雑把になるせいか、隙も出来てくる。
その隙を突いてレイドの魔剣がシュトルツの腹を切り裂いた。
深く切り裂き、シュトルツの口から「くっ」という声が漏れた。
その声は苦痛によるものかレイドには判断できなかった。
腕を切断されても苦痛の声を上げなかったことから、痛覚が鈍くなっているか、そもそもないのだとレイドは判断を下す。
レイドによって付けられた深い傷も一瞬で再生してしまう。
一度大きく距離を取ったシュトルツは、懐から赤い液体が入った何かを取り出した。
「これが何か、貴様にわかるか?」
レイドは答えない。ただ、注意深くその何かを見つめる。
シュトルツは無言のレイドが、わからないと思ったのか、得意げに語る、
「これが――」
「
「……そうだ」
自分が言おうとしたことを先に言われたからなのか、少し間が空いてシュトルツは肯定した。
そんなシュトルツだったが、次の瞬間にはその魔人の血液が入った注射器の形をしたビンを、細い管状の針を自らの首へと突き刺し――注入した。
ドクンッ
何かが聞こえた――否。
その音はシュトルツから聞こえていた。
ドクンッ、ドクンッと脈動する。
少しした次の瞬間、シュトルツが「ガァァァァァァァッ」という叫ぶ声が木霊し、不気味で邪悪な魔力が螺旋を描き天を衝いたのだった。
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