第83話:血に染まった玉座の間
玉座の間へと入ってきた魔王軍。
そこへ、入ってきたのと同時に兵や近衛たちが武器を片手に襲い掛かった。が、バルザークが大剣を一閃したことで、襲い掛かった全ての者が絶命した。
「ひぃぃっ!? だ、誰かいないのかっ!?」
国王、カルロアは声を荒げる。
「陛下、私が」
「キュロス!」
カルロアにキュロスと呼ばれた筋骨隆々の白金の鎧に身を包む男が一人、前に歩み出て剣を抜いた。
キュロスと言う名にレイドは聞き覚えがあった。
この男は王国随一の剣の使い手、各国にも認められた剣士――【剣聖】であった。
「剣聖か……」
「ほう。知っているのか」
カルロアの言葉に黒衣のコートを着て仮面を付ける男――レイドは答えた。
「知っている。誰もが認める最強の騎士であり剣士ということを」
「そうか。では――死んでもらう。やれ!」
だがキュロスは動かない。
「何をしている! 早くそいつらを殺せ!」
キュロスは口も開かない。なぜなら……
「もう死んでいる」
「何を言って――」
次の瞬間、キュロスの首がズルっと落ち血飛沫を上げる。
何故キュロスの首が落ちたのか。それは、レイドがキュロスの知覚速度を上回る速度で斬ったからである。
手に持つ魔剣からは血が滴り落ちている。
「「「ひ、ひぃぃぃ!?」」」
叫び声を上げ逃げようとする大臣達。国王は何が起きたのか理解できないでいるようだった。
そんな玉座の間に、少女の声が聞こえた。
フランである。
「情けないな」
そこでフランへと視線が集まる。
我を取り戻したカルロアは、未だに信じられない光景に驚きながらも、冷静に尋ねた。
「……誰だ貴様?」
「フラン・ヴィレアーレ。魔族の王。魔王である」
「……魔王がわざわざ攻めに来るのか? バカげている。嘘も大概に――ッ!?」
その瞬間、濃密な魔力が玉座の間に満ちた。
カチカチと歯を鳴らし、青い顔をするカルロア。
魔王と違い、人間の王は一部を除いて鍛えたりはしない。よってこのようなことに耐性が無いのである。
「貧弱な王め。バルザーク、奴を除いて全て殺れ」
「いいのですか?」
チラッとレイドを見るバルザーク。
「ああ。奴は俺が直々に殺す」
「わかった」
「何を言って――」
カルロアが最後まで言うことは無かった。
なぜなら、カルロア以外の全ての者が、バルザークの持つ魔剣によって一瞬で焼かれたからである。
ゆっくりと歩を進めるレイド。
一歩。また一歩と近づくと、カルロアの股から液体が流れだした。
「わ、私を誰だと思っているのだ! この国王なのだぞ!」
「……それがどうした?」
「ぶ、無礼であるぞ! 今ならまだ許してやる!」
レイドを含めた魔王軍の面々が呆れた表情をしている。
「本当に情けない」
フランのその呟きがやけに響いた。
「許してやる? どの面下げて言ってる? 忘れたとは言わせないぞ」
そう言ってレイドは仮面をゆっくりと外した。
カルロアはその顔を見て、驚愕の表情を浮かべて呟いた。
「その顔は!? な、何故貴様が、レイドがここに居る!!」
「何故かって?」
レイドは薄っすらと笑みを浮かべ答えた。
「――復讐に決まっている」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。