第81話:魔王軍、王都へ

「レイド、成功するのか?」

「どうだろうな。だが夜になればわかることだ。それまでは兵を休ませようか」

「じゃな」


 それからしばらく、ミレーティアの相手をしながら待っていると、ギギギッという音を立てて、閉ざされた門が開かれた。


 そこからは、全身血塗られたラフィネが立っていた。

 その後ろには兵達の死体が。


「どうやらしっかりとやったようだ」

「その様じゃな。全軍に通達する。決して一般人は殺すな! では――全軍、突撃ッ!」


 フランの号令で魔王軍は突撃を開始した。

 開いた門から次々と魔王軍が侵入していく。


「ま、魔王軍が侵入をしてきたぞ!」

「それよりも何故門が開いているのだ!」

「わかりません。ですが勇者様を見たという報告も上がってきております!」

「なんだと!? 捕まったのではないのか?!」

「不明です。ですが、聖剣を持っていたとも……」

「なら何故姿を現さない」


 そんなことを考えていても仕方がないので、兵士達は民の安全を確保しつつ、侵入をした魔王軍を迎え撃つべく、武器を手に取り戦うのだった。


 侵入を果たした魔王軍は次々と兵達を殺していく。


 魔王軍が通った後に残るのは屍のみ。



 その頃王城では。


「な、何だと!? それは誠か! 嘘ではないのだな!!」


 カルロア国王は、報告にきた兵に問いただす。


「ま、間違いありません。聖剣も確認致しました。それにあの容姿は間違いなく勇者様です」

「まさか勇者ラフィネも寝返ったというのか……」


 信じられない。そう言った具合でドカッと玉座へと腰を下ろすカルロア国王。


「で、ですが陛下。まだそうと決まったわけでは」

「……そう、だな」


 唯一の希望であった勇者ももういない。

 だが、国王達は知らなかった。勇者が操られているということを。



 魔王軍はそのまま王城を目指して進む。


 気が付けば王都の半分は魔族の手に落ちていた。


「そのまま蹴散らしつつ王城を包囲せよ!」


 フランが指示を出す。

 それに従い魔王軍は徐々に進んでいく。


 そして数時間後。


 王城は完全な形で包囲されていた。


 逃げ道などありはしなかった。


 少しずつ夜が更けて朝陽が昇り、王都を光で照らしていく。


 魔王軍は幹部を集め、どうするかを話し合う。


「このまま焼き払うのはどうでしょうか?」


 一人の幹部の提案に、賛同する者が多数。

 だが、レイドはそれを良しとはしなかった。


「賛成できない」

「……どうしてだ? まさか今更勇者に戻りたいと? ここで王都を救って英雄になりたいのか?」


 首を横に振り否定した。


「俺が国王を絶望に落としてから殺す。これだけは譲れない」


 レイドの瞳を見るが、その目は復讐の色で彩られていた。


「……わかった。ではそのまま複数の部隊で王城に攻め入れよう。レイド、それで良いな?」

「助かる。恩に着る」


 決まったことでフランが声を上げる。


「では決定だ。それとそれはどうする?」


 フランがレイドの側にいる虚ろな瞳をする少女――ラフィネへと向けた。


「連れて行く。責任は俺が取る」

「わかった。みなも異存は無いな?」


 頷く一同。


「では一時間後に攻め入る。準備を済ませよ」

「「「はっ!」」」




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