第78話:開戦Ⅱ

王城の玉座は現在、作戦司令部となっていた。


「何をしているのだ! 防衛ラインが突破されたではないか!」


王は玉座に座りながら、報告に来た部下に向かって声を荒げた。


「お、思ったより魔王軍が強く、さらには魔物を使役したようで……」


部下がそう伝えるも、王の苛立ちは治らない。


「このままでは突破されるのも時間の問題だ! 何としてでも魔族を王都に入れるではない! 各国の援軍にもそう伝えるのだ!」

「「「はっ!!」」」


 こうして連合軍は王都を囲う壁まで後退し、防備を固めるのだった。



 後退していった連合軍を見てレイドは口を開いた。


「どうやら連合軍は後退したようだな」

「そのようじゃな。壁前で固まっているのを見るに、あそこが最後の防衛ラインなのだろうな。……どうする?」


 フランの問いに、レイドは後方見て口を開いた。


「しばらく戦闘をしたら勇者を使うか」

「……そういうことか」


 レイドの言った言葉の意味を察したフラン。


「ではそうしようか。――全軍、敵魔法部隊を警戒しながら前に進め!」

「「「はっ!」」」


 軍を整え、前へ前へと進む魔王軍。


 しばらく進むと王都がすぐ目の前に見えた。

 そこには多くの連合軍の兵達が武器を構え、待ち構えていた。


「魔法部隊を前に出せ」


 フランの命令によって、魔法部隊が整列し、手の平を連合軍へと向けた。


「目標、敵連合軍――放て!」


 大小様々な魔法が連合に向けて放たれた。


「結界展開!」


 連合軍の誰かが放ったその言葉に、魔法部隊が結界を展開し――直撃した。

 激しい爆音と共に衝撃が結界を揺する。

 ビリビリッと結界全体を伝う衝撃ではあったが、破壊するに至らなかった。


「続けて放て!」


 フランの命により、続けて放たれる魔法の数々。


「結界に魔力を注げ! 強化するのだ!」


 連合軍の指揮官だろう人物も、負けじと命令をし、結界を強化する。


 数分による魔法の攻防戦を勝ち取ったのは、魔王軍であった。


 攻撃に耐えられず、結界がビキビキと音を立てて亀裂が生じたのである。

 そして結界はパリンッという音を立てて消え去り、魔法が連合軍へと飛来した。


「急ぎ結界を張るのだ!」

「間に合いません!」

「クッ!」


 その言葉を最後に魔法部隊の指揮官だろう人物は、魔王軍が放った魔法攻撃に飲み込まれるのであった。


 その光景を見届けたレイドは、後方に向かって歩き出した。


「何処に行くのだ?」

「レイドお兄さん?」


 フランとミレーティアが声をかける。


「勇者の所だ。そろそろ準備をさせないとな」

「そうか」

「わかった!」


 そうしてレイドは勇者であるラフィネの元へと歩き出した。



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