第77話:開戦Ⅰ
距離数百メートルという場所で睨み合う両軍。
連合軍は動こうとはしない。
いや、動けないと言った方が正しいだろう。
連合軍は王都を守るためにいるのだから。
ここの防衛ラインを突破させずに、魔王軍を撤退させれば良いのだから。
「さて、どう動こうか」
頬に人差し指を当てながら思案するフラン。
「魔王様、背後に回り込みますか?」
バルザークがそう提案する。
確かに悪くない作戦だろう。だが、ここで軍を分断すると、連合軍にチャンスを与えることになってしまう。
負けることはないにしろ、被害は大きいだろう。
「ダメだ」
バルザークの提案をレイドが却下した。
「レイド、ならどうする」
「……勇者を使うか?」
当初考えていた作戦が崩れるが、勇者がまだ生きており、捕まってることを知られれば連合軍になんかしらの影響は出ると考えている。
「いや、正攻法でいくことにしよう」
「……それでいいのか?」
レイドがフランに問う。
「妾が先制で魔法を放とう。そうすれば幾らか数は減るはずだ。どうだ?」
レイドとバルザークが顔を合わせて頷いた。
「フランがそれで良いなら、俺からは何もない」
「魔王様が決めたなら私に異論はありません」
二人の言葉に頷くフラン。
フランが最前線へと立ち、手を連合軍へと向け魔法名を紡ぐ。
「――
10センチ大の小さな黒い炎がフランがかざす手の平に出現し、放った。
飛んでいく火球が防衛ラインの中間地点へと着弾し、大爆発した。爆発は半球状で数十メートルという範囲を巻き込んだ。
その中に巻き込まれた者達は一瞬で塵芥と化す。
「――全軍、突撃せよ!」
こうして魔王軍対連合軍の戦闘が開幕となった。
両軍がぶつかり戦闘が始まる。
人間達は後方からの魔法で魔族達を倒していくが、負けずと魔族も魔法を放ち応戦する。
リリス達が使役した魔物も投入し、戦況は優勢となった。
「魔王様、私も出ます。このまま一気に防衛ラインは叩くべきかと」
「うむ。よかろう」
「では行って参ります!」
大剣を構え前線へと向かったバルザークは、思いっきり横薙ぎに大剣を振るった。
その一撃で数十人が吹き飛ぶ。
さらに地面へと叩きつけると縦に斬撃が放たれ、地面が数十メートル裂ける。
一時間経つ頃には、防衛ラインは半壊となっていた。
フランが全軍へと告げる。
「全軍、そのまま畳み掛けろ!」
自分達の王の命令に「応」と応える魔族達。
そのまま防衛ラインの人間達を蹴散らす。
しばらくして無理と判断した連合軍は、最終防衛ラインまで後退した。
「進めーーーっ!」
フランの言葉に魔王軍は進軍する。
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