第76話:可愛いだけ

 レイド達魔王軍は、ライネール王国王都を目指し進軍していた。

 途中でリリスが指揮する軍に居るテイマー達が魔物を使役していく。


 こうして数が増え、魔王軍の数は1万3千となった。


 そのまま進軍する魔王軍。

 レイドを挟むようにミレーティアとフランが。


 現在のレイドの恰好はいつもの仮面を付けている。


「レイド」

「ん? どうしたフラン?」

「ずっとレイドの事を睨んでいるがいいのか?」


 拘束され歩かされているラフィネの姿が。


 物凄い形相でこちらを睨んでいた。


「まあいいだろ」

「ならいいのだが」


 そんなフランへとミレーティアが。


「なら殺せばいいじゃん」

「それが出来れば良かったが、今回は使い道があるから殺せない」

「つまんないよ。早く戦いたい」


 ミレーティアはシュッシュッとジャブを放つように打ち出していた。

 拳からは風を切るかのような、普通の魔族ですら一撃で死ぬ様な威力を秘めていた。


 そんな光景を見て顔を青くする兵士達。


「ミレーティア、しばらくの我慢だ。そしたら戦える」

「わかったよレイドお兄さん」


 しばらくしてミレーティアが閃いたとばかりにレイドの方を見た。


「そうだ! レイドお兄さん肩車して!」

「ん? 別にいいがどうした急に?」

「たまには違う目線で楽しみたいの!」

「わかった。ほら」


 レイドは屈む。


「そ、その、後ろは見ちゃダメだからね!」


 恥ずかしそうにスカートを摘まむミレーティア。


「分かったから。ほら」

「……よいしょっと」


 しっかり乗ったのを確認して足を掴み立ち上がる。

 足を掴んだ瞬間に、ミレーティアが「ひゃっ」と可愛らしい声を上げていたが、聞こえない振りをしておくレイド。

 隣からフランが羨ましそうに見ている。


「レイド、その今度私にも……」


 上目遣いでお願いしてくるフランに、レイドが敵うはずもなく。


「わかった。また今度な」

「やった!」


 そういってガッツポーズをするフラン。


 そんなのほほんとした雰囲気の中、後ろからのラフィネの睨む視線が続いた。


 しばらくして休憩となった。

 王都まではあと少し。


 休憩が終わり一行が進んでいると、先方から気配があった。

 気配は魔族のものだ。

 先行偵察をしていた者だろう。


 少ししてフランの前へと現れ報告をする。


「魔王様、敵連合軍が王都近郊にて防衛ラインを築いている模様。その後方にも軍を確認しております」

「ご苦労。規模は?」

「規模は1万です」

「そうか。何か気になる物とかはあったか?」

「いえ。今のところは何も」

「わかった。そのまま偵察を続けてくれ」

「御意」


 下がる魔族の兵。


「何か隠しているかもな」

「そうなのか?」


 フランがレイドにそう尋ねる。


「奴等の事だ。警戒するに越したことはない」

「じゃな」


 こうして魔王軍は王都近郊の防衛ラインへと到着するのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る