第74話:二人きりの夜

 色々と大変だった風呂を上がったレイド達。


「良いか! レイドは私の夫だ! 下手に手を出したらただではおかないぞ!」

「私はお兄さんのお嫁さんにしてもらうの!」

「……なら私も」

「なら私もってことで。魔王様」

「ぐぬぬっ! 貴様ら!」


 まあ色々とあり、夜は一人で寝るということになったわけなのだが……


 レイドが一人で部屋から見える夜空を見ながら晩酌をしていると、寝室の扉が開かれた。

 入ってきたのは――フランであった。


「どうした? 寝れないのか?」

「ち、違う。いや、そうでもある」


 首を傾げるレイドに、フランは抱き着いた。

 レイドの胸に顔を埋めて堪能したフランは、抱き着きながら見上げてレイドを見た。


「……レイドが居なかった間、寂しかった」

「すまん」

「別に良い。仕方がなかったのだから。それよりも……ミレーティアやリリスたちの事はどう思っているのだ?」


 レイドが他の女に盗られないか心配するフラン。


「ミレーティアは妹のように思っている。リリスとイリーナは、そういう対象で見てはいない」

「……本当か? 嘘ではないな?」


 心配そうにするフランに、頷いて見せた。


「ああ。それに俺がフランを捨てるわけがないだろ」

「それは妾も同じだ」


 そして椅子に座るレイドへと、またがるようにして座るフラン。

 両手は首に回し密着する。


 互いの息が伝わる距離。


「……レイド」

「ああ」


 そのまま互いの唇と唇を重ね、すぐにフランの舌がレイドの中へと侵入してくる。

 そから数秒、あるいは数分という短くも長い時間が経ち、唇を話すと唾液が糸を引いた。

 名残惜しそうにするフランの顔は蕩けるように頬が上気し、目はトロンとしていた。


「足りない」

「そうだな。俺もだ」


 レイドは移動してフランをベッドへと押し倒す。

 そして再び唇を交わし愛し合う二人。



 ――数時間後。


 ベッドには満足そうな表情でスヤスヤと寝息を立てるフランの姿。

 風邪を引かないようにと毛布を掛けてやり、レイドも寝るのであった。



 翌朝。


「お兄さーーーーーーーん!」

「おはよう」


 入ってきたのはミレーティアとリリスであった。


「ふぁ~、おはよう二人とも」


 だが二人の様子がおかしい。


「どうした?」


 レイドがそう声をかけると。

 視線はもう一人の方に。正しくは隣で気持ちよさそうに寝ているフランであった。


「な、なんで魔王と一緒に?」

「どうして魔王様と?」


 どうして? という視線に、レイドは簡潔に答える。


「それは夫婦だからな。一緒に寝てもおかしくないだろ?」


 そう返すのであった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る