第73話:修羅場?

 その日の夜。

 魔王城の一室にて。


「今日はレイドお兄さんと寝るの!」

「レイドと寝るのは妾だ!」


 バチバチと火花を散らすようににらみ合う両者。

 レイドはただただそれを見ているだけである。


 それは何故か?


 女の言い合いに男が参加する余地がないからである。


「そもそもなぜレイドとなのだ! 一人で寝れるであろう!」

「今日は一緒に寝たいの!」

「「む~っ!」」


 当分は続くだろう。


「俺は風呂に入ってくる」


 そう言ってこの場を逃げようとしたが、悪手であった。


「「なら妾(私)も!」」

「いや、風呂は別だろ?」

「「一緒に入るの!」」


 どんなに説明しようにも、レイドに拒否権は無いようだった。

 そのまま大浴場まできたレイド達。


 この世界の風呂は基本、湯舟に浸かったりする。

 そのまま大浴場まで向かうと、途中でリリスとイリーナの二名に遭遇した。


 ジッと見つめるリリスとイリーナを見て、嫌な予感がするレイド。


「……レイドも入るの?」

「……あなたも?」


 リリスとイリーナの問いにレイドは頷いた。


「一人で入ると言ったんだがな。このありさまだ」


 そう言って両脇に居るフランとミレーティアの二名を見る。


 納得がいったかのような表情をするリリスとイリーナ。


「なら私も一緒に入る」

「いや、別にそう言うわけで」

「入る」


 イリーナを見ると、クスッと笑った。


「なら私も入ろうかしら」

「お前もか……」


 ミレーティアと睨み合っているフランを見ると、「良いんじゃないのか?」と言われてしまう。


 そう言われては俺からは何も言えない。


「好きにしろ」


 こうしてレイド達は歩き出した。

 途中、バルザークと遭遇し、「何処に向かっている?」と聞かれたので、大浴場とレイドが答えると逃げるようにして去って行った。

 どうやら巻き込まれたくないようだった。


 そうして着替えたレイドは、体を洗おうとして、またしても一悶着。


「私が洗うのだ!」

「お兄さんは私が洗うの!」

「私が洗う」

「いえ。ここは感謝を込めて私が」


 順にフラン、ミレーティア、リリス、イリーナである。

 貸し切りなために誰もおらず、助けも求められない。


「一人で洗うから――」

「「「「ダメ!」」」」


 四人の声が重なった。


「この魔王である私の命令が聞けないのか! そもそもレイドは妾の夫だぞ!」

「「「関係ないです!」」」


 三人の声が重なった。


「強い者に惹かれるのは当たり前です」

「リリスの言う通りです」

「私のお兄さんだもん」


 フランは「ぐぬぬっ」と悔しそうな表情をする。


「ではこうしよう」


 フランがある提案をした。

 それは――四人でレイドの体を洗うということだった。


 少しして、現在。


 レイドは四人に体を洗われていた。


 どうでもいいが、疲れる。


 そう思うレイドだった。




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