第70話:捕まった勇者に聖剣なんていらないよね!

 レイドはフランの場所へと向かった。

 しばらく会っていなかったので、ラフィネの相談だ。


 玉座の間にはおらず、私室かと思い尋ねた。


 ノックをする。


「俺だ。今良いか?」

「れ~い~ど~~~っ!!」


 するとすぐに扉が開き、ピンクの髪を揺らしながらフランが満面の笑みで飛びついてきた。飛びついてそのまま匂いを堪能するかのように、レイドの胸に顔を埋めスリスリとしてくる。


「ん~っ、この匂いだ。玉座の間で飛びつきたかったが」

「それは俺もだ。それよりも中で話さないか?」

「そ、そうだな!」


 レイドの手を引っ張りながら中に入り、ソファーに座ると、対面にもあるのにわざわざ隣にくっ付いて座ってきた。


「それで、何かあったのか?」


 フランが見上げるようにしてそう聞いてきた。

 その言葉にレイドは頷き口を開く。


「ああ。勇者をどうするか、だ。どう思う?」


 反応がない。フランの方に顔を向けると、ぷくーっと頬を膨らまし、不満気な表情をしていた。


「この状況で他の女の話をするな」

「……もしかして妬いているのか?」

「ち、違う!」


 顔を背けるフラン。だが耳は赤い。


「悪いな。今度は気を付ける」

「……本当か?」


 チラッと確認するように見るフラン。

 その表情は、「本当か? 本当に本当か?」と物語っていた。


「善処する。だから許してくれ」

「…………許す」

「ありがとう」

「それで、勇者をどうするか、か?」

「ああ。こちら側に勧誘をしたがな」

「むっ」


 不機嫌そうにするフラン。


「そう言って女を囲って」

「おいおい。囲っていないだろ?」


 レイドには身に覚えがない。


「そうだろ。アルミラースは帰ったが、その娘のミレーティアだ。どう見てもお前の事が好きだろう?! 他にもリリスが暗黒山脈から戻ったら女の顔をしていたぞ?!」

「確かにミレーティアのことは好きだ。だがそれは妹としてだ」

「ならリリスはどうなのだ?」

「それは俺にもさっぱりとしか……」

「暗黒山脈で何があった! 話せ!」


 レイドは暗黒山脈で何があったかを話すと……


「それはもうレイドに惚れているじゃないか!!」

「そうなのか?」

「この鈍感め! どうするのだ! ハッ!」


 そこでフランは何を思ったのか、目をうるうると潤ませながら口を開いた。


「ま、まさか、妾を捨てる、のか……?」


 どうやら盛大な勘違いをしているようだった。


「そんな訳ないだろ」


 こうして誤解を解くのに小一時間を要した。


 ミレーティアは何をしているのかを聞くと、リリスと一緒にいるらしい。

 そして、勇者ラフィネをどうするのか。レイドの考えを元にフランは答えた。


「奴隷の首をさせて聖剣は破壊」

「それでいいのか?」

「私としては殺しておきたいが……」

「そうだな。不安の要素だからな。それが確実か」

「良いのか?」

「勇者は復讐の対象外だ。まあ活かして利用しようとは考えていたがな」

「利用?」

「ああ」


 レイドは今しがた思い付いた勇者の利用と、今後の計画を話すのだった。

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