四章
第71話:王国の動きⅠ
ライネール王国の玉座の間にて激震が走った。
それは、魔族領へと進行させた1万5千の兵が、全滅したという報告であった。
何故全滅したのが分かったのか。
理由は、遠見の魔法で遠方から戦況を見ていたからであった。
「そんなはずはない! 1万5千の軍勢だぞ!」
「嘘に決まっておる!」
「魔族領で何が起きたか話せ!」
大臣や軍の関係者達も慌て、国王は報告に来た兵へと焦った表情で報告を促す。
だが、兵も信じられないといった表情をしている。
今回の進軍には相当な実力者や、優秀な指揮官もいたのだから。
「我が軍は魔王城近郊の森にて使役された魔物に襲撃されました。勇者様のお陰もあり一度は退けましたが――」
今回の内容を説目していく。
そしてアルミラースが現れたと聞いた瞬間、全員の表情が見るからに青くなる。
「ま、まさか、あの暗黒山脈に住まうといわれる」
「伝説のドラゴン」
「――煉獄龍王アルミラース……」
まさに絶望。
「そ、その煉獄龍王ですが、連れてきたのは例の仮面の男。ノワールでした」
「――なにっ!?」
「一体どうやって……」
驚くみんなを目に、報告は続けられる。
「勇者様が四天王の一人、バルザークを重傷まで追いつめましたが、あと一歩のところでノワールに邪魔され敗北。煉獄龍王とノワール、もう一人の人に姿を変えたドラゴンと思われる者の三名によって、一万名以上いた我が軍は一人残らず――全滅しました」
沈黙が場を支配し、たった一人と二匹に一万の軍が蹂躙されたと聞き、膝を突く者達が続出する。
圧倒的なまでの強さによる絶望感が、心を侵食していく。
そこに、ハッと思い出したのか、国王が尋ねた。
「そ、そうだ! 勇者殿達はどうなったのだ!」
その言葉にまだ『希望がある』として顔を見上げる大臣ら。
だがそんな期待はあっさりと裏切られ、再び絶望が舞い降りる。
「……勇者様達の仲間は四天王との戦闘で重傷。その勇者様もノワールとの戦闘で意識不明となりました。軍が蹂躙される前、煉獄龍王に連れていかれるのを目撃しております。以降の生死は掴めておりません」
「せ、聖剣は、どうなった? 回収、したのだろうな……?」
ワナワナと震える声でそう尋ねる国王。
「……いえ。聖剣も奪われました」
「終わった……何もかも。我らは負ける。聖剣が無ければ勇者も選定出来ない。滅ぶしかないのか…………」
勇者達と聖剣が無いことに、悟ったかのように全ての者が膝を突いた。
国王も力なく座る。
全員の表情に浮かぶのは、『諦め』と『絶望』であった。
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