第67話:解決

「――というわけだ」


 レイドはこの場の全員へと説明を終えた。

 静まり返る玉座の間。


 幹部達がバルザーク達四天王へと問う。


「バルザーク様達四天王の皆様は知っていたのですか?」


 その問いに、バルザーク、ベノム、イリーナ、リリスが頷いて肯定した。


「なら何も言わなかったのですか!? 人間ですよ!」


 バルザークが口を開いた。


「言った。止めるべきだと。だが――」


 バルザークの言葉をイリーナが引き継いだ。


「魔王様の決断に逆らえるわけがない。そうでしょう?」

「文句があるなら挑めば良い」

「リリスの言う通りです。それが我ら魔族でしょう?」


 他三人の言葉に誰もが黙ってしまう。

 だが、それでも、何か言いたそうな表情をする者達。

 その中の一人が代表して思っていることを伝えた。


「その目の前の、魔王様の夫である元勇者は、我らの同胞を多く殺したのです。それを許せるはずがありません」


 尤もな言葉であった。

 そこにフランが口を開く。


「黙っていたのは申し訳ないと思っている。すまない。だが――妾は、この敵であった元勇者のレイドに惚れたのだ」

「そんな理由で……」

「確かにそんな理由だ。だが、レイドが魔王城に単独で乗り込み魔王である妾に勝利したのだ。これで妾が殺され、四天王も殺されていたら人間達との戦争には負けていたのだぞ?」

「で、ですが! それでも多くの同胞が――」

「黙れ!」


 バルザークが一括した。

 それにより続きを言えなくなった魔族。


「ベリューレン砦の時だって、先の戦いだって、レイドの活躍によって被害が最小限にできた。連合軍だってほとんどがレイドによって殲滅させられている。レイドが居なかったらどうなっていた?」

「そ、それは……」


 口籠ってしまう幹部達。

 確かにここ最近の戦いでは、レイドが居るお陰もあって被害がいつもりかなり少なくなっていた。魔王軍が圧勝していた。


「認めなさい。今は敵ではないのです。こうして勇者を捕らえ、多くの人間達を屠った。それが何よりの証拠でしょう?」


 ベノムがそう言った。


「そうね。何か問題があるのかしら? 確かにレイドは多くの同胞を殺した。それは事実よ。でもね、彼は言ったわ。魔族を勝たせるって」


 イリーナの尤もな言葉に誰も何も言わない。

 リリスが最後に言う。


「もう認める。レイドは人間を裏切って、魔族側に付いた仲間。それに魔王様とは毎日イチャイチャしてたし。レイドが魔王様を裏切るなんて出来ない」

「ま、まつのだリリスよ! 妾はレイドと毎日イチャイチャしては……うっ、うぅ~……」


 フランは顔を赤くして蹲ってしまう。

 魔王様が普段見せることの無い姿に、周囲は唖然。


 チラチラとレイドの方を見ては「ち、違うよな!? 毎日イチャイチャしてないよな!?」と訴えている。


 そんな姿を見ては信じるしかなかった。


 幹部の男はレイドへと問う。


「本当だな?」

「勿論だ。俺はフランを裏切ったりはしない」

「誓えるのか?」

「ああ。嘘ならこの首を差し出しても構わない」


 その目は真剣だった。


 しばらくして幹部達が顔を見合わせて頷いた。


「……わかった。まだ信用できないが、今は信じよう。だが、同胞の恨みは忘れないぞ?」

「わかっている。俺が殺した者達の為にも、俺は魔族を、フランを勝たせるために尽力するつもりだ」

「そうか。好きにすると良い。だが、まだ警戒はさせてもらうぞ」

「それくらいはわかっている」


 最後にアルミラースが告げた。


「ふむ。この件は一件落着、だな!」


 だが問題はまだ残っていた。

 そう――勇者達であった。



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