第63話:アルミラースの蹂躙

 レイドとミレーティアの二人によって戦場は混沌と陥った。

 みるみるうちに連合軍の数が減っていく。


「な、何だコイツらは!」

「相手は二人だ! それに一人はガキだぞ! 早く殺れ!」


 所々から怒声染みた声が聞こえてくる。

 レイドとミレーティアを包囲するも一瞬で薙ぎ倒され、ある者は切断され一順で絶命した。


 そのような地獄の様な光景に、連合軍は徐々に後退していく。


「ミレーティア、アレをやれ」

「任せてっ!」


 レイドに応えて、息を大きく吸い込んだ。

 そして――後退していく連合軍へとブレスが直撃し多くの者が消し炭となった。


 レイドも負けじと拳へと魔力を込め、突き放った。


 込められた膨大な魔力が衝撃波となって連合軍へと襲い掛かり一気に数を減らした。


 圧倒的な力による蹂躙が、二名によって繰り広げられ、すぐに殲滅が終了するのだった。



 ◇ ◇ ◇



 アルミラースはレイドとミレーティアがいる場所とは別の、後方へと向かっていた。

 そこでは魔法部隊が連合軍をなんとか押し退けている状況であった。


 このままだったら消耗戦になってしまうだろう。


 そのまま戦域まで降下し、魔王軍がいる後方部隊のところまで近寄った。


 そんなアルミラースの姿を見た両軍の兵士達が叫ぶ。


「れ、煉獄龍だ!」

「どうしてここに!?」

「現れたと聞いたが、すぐに消えたのではないのか!」


 どの戦場にも混乱が巻き起こっていた。

 後方の全指揮を任されていたイリーナは、アルミラースが現れたことに驚きつつも、思考する。


 どうしてここに暗黒山脈の支配者が……確かレイドが行くとは言っていたけど……まさか!


 そこで思った。もしかしてレイドが連れてきたと。


 全生物の頂点でもあるドラゴンの、さらにその中の絶対者であるアルミラースに、恐怖に駆られながらも口を開き尋ねた。


「煉獄龍王アルミラースに聞きたい」


 自分へと問いかける声に気が付きアルミラースが下へと視線を向け、口を開いた。


『どうした。魔族の女よ』

「お聞きしたい。レイドという者を知っているか?」

『知っているも何も、そのレイドに頼まれてここへと参った。魔族の軍を引かせるのだ。あとは我がやろう』

「で、ですが――」

『聞こえなかったか? これはレイドとの約束なのだ』

「――ッ! わ、分かりました」


 アルミラースから発せられる威圧によって口を噤み、ただ分かったと、そう頷いた。


 そしてそのまま軍を引かせると、アルミラースが連合軍へと向けて口を開く。


『聞け、愚かな人間共』


 その声は戦場全体へと響き渡った。


『ここは我が住まう土地だ。我が領土に踏み入れたこと、万死に値する。死をもって償うといい』


 連合軍へと告げるアルミラース。


「何を言って――」


 突如現れたアルミラースの言葉に反論しようとしたが、その声は最後まで言い切ることはできず、その姿を灰と化した。


 そう。ブレスが放たれたのだ。

 一撃のブレスによって連合軍の戦力は大きく削られた。

 それからはアルミラースによる一方的な蹂躙で、連合軍の魔族領侵攻作戦は幕を閉じるのであった。


 今回の戦いで、魔王軍の被害は4000に対し、連合軍である人間側の被害は15000。つまりは今回の作戦で投入された戦力の全滅であった。



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