第64話:勇者達の処遇

「……レイド、勇者をどうするつもりなのだ?」


 フランの問いは、その場の全員の代弁でもあった。

 この場の全員の視線がレイドへと向けられる。


 レイドは一度、簀巻きにされている勇者達を見て、再び視線をフランへと向けた。


 正直、俺はどうでも良いと思っている。

 だが、勇者であるラフィネの仲間、ダイリ、トロワ、エリスを許すことはできない。


「勇者以外は好きにしろ」

「……復讐をしないのか?」

「いいのか? それに勇者はどうするつもりだ?」


 他のみんなも同じ反応であった。


「そうだな。勇者を交渉材料に使う。他の三人はそうだな……お前達が良いのなら俺が殺すが? 俺以上にこいつらに復讐したい奴がいるはずだ。どうだ?」


 そう言って周りを見ると、勇者達へと憎しみの瞳を向けている。

 許可が出れば今すぐにでも殺しそうである。


「本当に、いいのか……?」

「ああ。それにこいつらは連合軍への交渉材料にはならないだろう」

「そうか。では勇者以外はみなで好きにすると良い」


 フランの言葉に他の者達が笑みを浮かべた。

 どうやって殺すかを考えているのだろう。


「うっ、うぅ……こ、ここは?」


 そこで四人が目を覚めし、一気に騒がしくなる。


「き、貴様一体何者だ!」

「こ、ここはまさか!」

「ま、魔王、城……?」

「しかも……」


 最後のラフィネの言葉に四人が頷き思った。


 すでに――詰んでる、と。


 どう足掻いても逃げ出せる状態ではなかった。

 聖剣もない。


 聖剣はここへ連れてこられる前にレイドによって回収されている。


 ラフィネはフランの側にいるレイドを睨み付け口を開いた。


「ノワール! これはどういうことだ!」

「ノワール? レイド、この勇者は何を言っているのだ?」


 フランがレイドを見て質問した。


「フラン、ノワールとは俺がこいつらに名乗っていた名だ」


 そう言うや否、ラフィネのみならず、他の三人もフランが先ほど発した名に反応を示す。


「お、おいお前、今、この男の事をレイドと言ったな?」


 トロワが魔王であるフランへと尋ねる。


「ああ、そう言ったが?」

「コイツ、人間だろ?」


 その言葉にこの場の、いや。正しくはフランと四天王以外が反応した。


「人間だと!?」

「どういうことだ!」

「魔族ではないのか!」

「魔王様、説明を!」


 非難の声が殺到する。


 そこにトドメとばかりにエリスとダイリが口を開いた。


「その男は、連合軍の元――」

「――勇者だ」


 衝撃的な内容に、その場の全員が言葉を無くす。

 最後にラフィネが口を開いた。


「あなた達魔族の――敵よ」




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