第61話:娘には甘いパパドラゴン

降下したレイドとミレーティアは、勇者達を避難させようと運ぶ兵士達の前へと降り立った。


「なっ、貴様は! みんな警戒せよ!」

「「「はっ!」」」


武器を抜いてこちらを警戒する兵士達。

先頭を走っていた部隊長だろう男がレイドへと告げた。


「これ以上勇者様に何をする気だ!」

「何を? 決まってますよ。そちらの勇者を置いていってもらいます」

「ふざけるな!」


部隊長の男は顔を真っ赤にさせて激怒する。だがレイドは剣を抜いて――一閃。

遅れて部隊長の首が落ち血飛沫を上げた。


「部隊長! 貴様よくも!」

「では置いていってもらいます」

「レイドお兄さん、殺って良いんだよね?」


ミレーティアがレイドの名前を呼んだ時、武器を構え警戒するみんなが反応した。


「この娘、先程この男をレイドと言ったな?」

「あ、ああ。だがレイドは偽りの勇者だと陛下が」

「そうだ」


何やら言っているが、レイドにはどうでも良いのだ。

だって奴等はレイドを裏切ったのだから。


「貴様仮面を――」


外せ。そう言おうとして胴体に穴が開いた。


「ごふっ……え?」


血を口から吐き出しゆっくりと倒れそのまま絶命した。

男はミレーティアが放った一撃で腹に穴を開けて死んだのである。


「ミレーティア、人の話は最後まで聞くものだぞ?」

「そうなの?」

「まあいいか」

「さっさと片付けよう」

「は〜い」


とは言っても、ものの数秒で全滅した。


「勇者とその仲間を回収して移動しよう」

「どこに行く?」

「魔王城に行く前に戦場を片付ける」

「は〜い。ならパパを呼ぶよ。荷物を預けないと」


荷物とは勇者であるラフィネ達のことだろう。

たしかに荷物だなと頷くレイド。


空に向かって手を振ってしばらくするとアルミラースが降りてきた。


『今度はどこだ?』

「魔王城に行く前に戦場を片付ける」


その言葉にアルミラースは愉快そうに笑い提案をしてきた。


『そうかそうか。ならばレイド、我も参加してやろうか? 我の加護を受けていると知れば攻めてくることは減るだろう?』


その提案にレイドは少し考える。が、攻められてばっかりなため、反撃に移ろうと考えた。


「わかった。その前にこの勇者達を頼めるか?」

『魔王城までか?』

「いや。掴んでいてくれればそれで良い」

『この我を荷物運びか?』

「パパ、ダメかな?」


ミレーティアがウルウルとした瞳で訴えてくる。

愛娘に敵うはずもなく、アルミラースは承諾した。


『荷物運びは任せておけ。それと我が後方を殲滅してこよう』

「なら俺とミレーティアで正面をやる。――行くぞ」


そうして最強の元勇者と最強のドラゴンは殲滅へと動くのであった。





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