第55話:元勇者VS勇者Ⅱ
魔力がラフィネの持つ聖剣へと収束されていく。
それも尋常ならざる量の魔力が。
「これで死になさい!」
聖剣に集まった魔力が天を衝き曇天だった空に穴が開いた。
そのまま振り下ろされ一直線へとレイド目掛けて迫りくる。
レイドは迫りくる光の柱を仮面越しで見つめ――笑みを作った。
そしてそのまま光はレイドへと直撃した。
だが――
「なん、で……」
ラフィネの口から「ありえない。そんなはずはない」と言わんばかりな言葉であった。
「なんで、倒れていないの……っ?!」
そう。レイドは――魔剣を片手にラフィネの全力による攻撃を防いでいたのである。
「まだまだですね。これで勇者ですか。笑わせないでください」
魔剣を振り払うと光の柱は消え去り目を見開き愕然とするラフィネ。
「戦闘の最中に呆けているとは」
「――ッ!?」
ラフィネが気が付いたころにはすでにレイドが目の前で大剣状態の魔剣を振り下ろそうとしていた。
咄嗟の判断で聖剣を盾のようにして防御態勢を取るラフィネだったが……
「くっ――きゃっ!」
まともに防ぎきれるわけもなく、そのまま後方へと地面を転がりながら吹き飛んだ。
そして傷だらけなのにも関わらず、苦痛の表情を浮かべながらもゆっくりと聖剣を杖が代わりにして立ち上がり構えた。
「どうして、限界突破状態なのに……」
ラフィネは限界突破しているにも関わらず、反応が遅れるとは思ってもいなかった。
だがレイドにとって、今のラフィネの実力で限界突破をしたところでレイドとの実力の差は埋まるはずもなかった。
そこまでにレイドとラフィネの実力はかけ離れていると言えた。
瞬きをした一瞬にレイドがすぐ眼前へと迫っており再び大剣で薙ぎ払おうとしていた。
再びガードをするもはり虚しく吹き飛ばされた。
「かはっ……げほっげほっ……」
咳をするとそれに血が混じっていた。
「くっ、なんで、どうして勝てないの……!」
痛みよりも悔しさの方が強くそんな声が漏れる。
「ここで勇者を殺しておくのも良いですね」
「――ッ!?」
聞こえた声に思わず顔を上げると目の前にはレイドがおり、仮面越しに見下ろしていた。
「殺せばいいわ」
「ふむ。ですが弱い勇者を殺したところでまた現れると厄介ですからね。次、私の前に現れたら死を覚悟する事です」
「ま、待ちなさ――うっ……」
限界突破の状態が解け、体へと掛かっていた負担が押し寄せてきた。
「限界突破をしてこの状態ではこの先が思いやられますね」
「まち、な、さ、ぃ……」
ラフィネは立ち去ろうとするレイドを止めようと声をかけるも途中で意識を暗闇の中へと落とすのであった。
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