第54話:元勇者VS勇者、再び
バルザークに聖剣が直撃する瞬間ガキンっと何かによって阻止された。
「コイツは殺らせませんよ」
ラフィネとバルザークはその人物を見た。
「――ノワール!」
ラフィネはキッとレイドを睨みつけた。
バルザークは名前を出さなかったが、見覚えのある仮面を付けた人物がレイドと分かった。
「お前、どうして、ここに……?」
レイドはラフィネの方を見たままバルザークの問いに答えた。
「なに。お前が死にそうだったからな」
「ちっ、助けられたか」
「バルザーク、お前はそこで休んでいろ。あとは俺がやる」
「お前に頼むのは癪だが、仕方がない、か……頼んだ」
「ああ」
レイドはラフィネの方へと向き直った。
未だに睨みつけるラフィネは口を開いた。
「ノワール、どうして邪魔をするの?」
「邪魔? この人は私の仲間ですよ。助けたに過ぎません」
口調を以前対峙した時のように戻す。
「そう。今のあなたに渡しを止められるの?」
ラフィネからはすさまじい気配と魔力を感じる。
だがレイドは素言葉を鼻で笑った。
「ええ、止められますよ」
そう告げ――ラフィネが仕掛けた。
一瞬で迫るラフィネ。普通の者ならば反応すら遅れるだろう速度に反応する。
膨大な魔力が秘められた聖剣とレイドの持つ魔剣が衝突し火花を散らす。
「くっ! その件、魔剣ね」
ラフィネはレイドの持つ魔剣の異質さに気が付いたようだった。
「なに、その魔剣は」
「最近作りましてね。頑丈でしょう?」
そう言って弾き返す。
「くっ!」
空中で態勢を立て直したラフィネは着地をする。
その着地を狙てレイドはラフィネに向けて
「小細工を!」
聖剣で全てを切り捨てるも、爆発で視界を遮った。
次の瞬間にはラフィネの気配察知に反応があった。
「そこっ!」
背後へと聖剣を振り払いそこにいたレイドを切り裂いた。
切り裂いたことで笑みを浮かべたラフィネだったが、すぐに驚愕の表情を浮かべた。
「消えた――きゃっ!」
レイドの蹴りが腹部へと直撃し勢いよく吹き飛ぶラフィネはそのまま地面を転がった。
「うっ、くっ……どうして、気配だって魔力だって感知したのに……」
ゆっくりと立ち上がり疑問の声を漏らすラフィネに、レイドは親切に答えてあげた。
「それは残像を本物と同じ様に気配と魔力を持たせたからですよ」
「なら気配は二つあるはずじゃ……」
「それは気配と魔力を消せばいいだけですよ」
「そんなことが」
「可能ですよ。このように」
その瞬間、ラフィネの視界からレイドの姿が消えた。
「ど、どこっ!?」
周囲を見渡しつつも、気配とその魔力を探るラフィネ。
限界突破しているラフィネは気配察知と魔力感知がより一層研ぎ澄まさている。だが、それでもレイドの気配と魔力が感知できないでいた。
「――ここですよ」
そうして魔剣を振り払いラフィネの聖剣を弾きさらに回し蹴りを放ち後方へと吹き飛ばした。
「どうしたのですか? 限界突破していても、勇者とはその程度の実力なのですか?」
「……ない。負け、ない!」
再度立ち上がるラフィネは聖剣を構え、膨大な魔力を聖剣へと流し込む。
より一層輝きを増す聖剣。
「これが今の私が出せる本気よ! 聖剣よ、私に力を!」
周囲の魔力がラフィネへと集まり力へと変換されていく。
「今度こそ、仲間を傷つけたこと、後悔させてあげる!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。