第51話:バルザークVS勇者
――翌日。
人間軍の作戦は至ってシンプルであった。
二手に別れそれぞれの方向から挟み込む形を取ったのである。
人間軍の動きは魔族側にも伝わっていた。
「二手に分かれたか。このことを魔王様は?」
「知っております。対応はバルザーク様に任せると」
「わかった」
バルザークはシャグランの情報をもとに思考を巡らせる。
だが肝心なのは勇者の位置であった。
「勇者の位置は特定できているのか?」
バルザークの質問にシャグランは答えた。
「いえ。勇者の居場所は特定できませんでした。ですが、それと思しきものなら正面の軍にいたと報告を受けております」
「そうか。つまりは俺の相手をすると」
「恐らくは」
「こちらは12000か」
「はい」
「ならばこちらも半分に分けて対応するしかない」
「了解です。どう分けますか?」
「支援のイリーナには後方で指揮を取ってもらう」
「その様にお伝えいたします」
シャグランは部下に伝令を走らせた。
しばらくして軍の半分が後方へと向かった。
それから一時間後。
バルザークの前に人間軍が姿を現した。
流石に昨夜と同じ手は使えるはずもなく、今回は正面でのぶつかり合いとなるのは明白であった。
「バルザーク様どうしますか?」
「開戦の合図は俺が出そう。どうせ勇者が出て来るからな」
「畏まりました」
一歩前に出たバルザークは魔剣プロクスを掲げ魔力を流し――振り下ろした。
振り下ろされた魔剣プロクスからは炎の斬撃が縦に地面をぐりながら人間軍へと迫る。
直前、光の障壁が展開され見事に防がれてしまう。
人間軍の正面には聖剣を地面に突き刺し両手を乗せバルザークを見つめる勇者ラフィネの姿があった。
バルザークの攻撃が合図となり魔族軍が動きだした。
釣られて人間軍も動く。
だが勇者達とバルザークは睨み合ったまま動かない。
そして先に動いたのは――勇者達の方であった。
ダイリによる魔法攻撃が地面に着弾しバルザークの視界を遮った。
魔剣プロクスを薙ぎ払って砂塵を飛ばし視界を確保したが、すでにラフィネとトロワの姿はそこには無かった。
次々と飛来する魔法をバルザークは魔剣プロクスで炎の壁生み出し防ぐ。が、その時、横と背後から気配を感じ取った。
「はぁぁっ!」
トロワの大剣を魔剣プロクスで弾き返し、低姿勢で切り裂こうとしていたラフィネの攻撃を後方へと跳躍して回避する。
周囲を見ると四人に囲まれた状況となっていた。
そのままダイリの魔法が次々と飛来する。
エリスが前衛の二人を強化し続ける。
バルザークがエリスへと斬撃を飛ばし攻撃するも魔法で防がれてしまう。
そこに攻撃の隙を突いてダイリとラフィネ、トロワの三人が攻撃を仕掛けるといった状況となっていた。
暫しの交戦のあとバルザークが口を開いた。
「おいおい。勇者とはこの程度なのか? 一人相手に複数人で攻撃するとわな」
「……これは戦争。そんなの関係無いに決まっている」
「それもそう――だなっ!」
バルザークがラフィネへと詰め寄り振るう。
「くっ!」
なんとか攻撃を受け止めるも、あまりの攻撃の重さに思わず声を漏らす。
援護しようにも近接では魔法の支援が行えないダイリは、エリスと同様に魔法でラフィネとトロワの強化へと動いた。
「感謝する!」
トロワがダイリへと礼を言いバルザークへと攻撃に移り、ラフィネはトロワが加わったことで多少の余裕ができた。
バルザークの脇腹に一筋の傷が出来た。
傷を与えたことで表情に笑みを浮かべるラフィネ。
「なに一度の傷で嬉しそうにしてやがる?」
バルザークの気配が大きくなった。
詰め寄ったトロワを蹴り飛ばし斬撃を飛ばす。
「ぐはぁっ!!」
斬撃はそのままトロワの胴体へと直撃し鮮血が舞う。
「「「トロワ!」」」
三人が叫ぶ。
だが……
「きゃっ」
ラフィネは蹴り飛ばされ地面を転がった。
「貴様!」
魔法を飛ばすがその悉くを切り裂きバルザークはダイリへと詰め寄り背後を取って切り裂いた。
ダイリは咄嗟に障壁を展開したようだが、魔剣プロクスはいともたやすく斬りいたのだ。
また一人、今度は背中から血を長し倒れるダイリ。
バルザークはエリスへと視線を向けた。
「――
障壁を展開するも、一瞬で詰め寄ったバルザークは魔剣プロクスに魔力を流し光の障壁を破壊する。
「うぐっ! そん、なっ」
魔剣プロクスは障壁を破ってそのままエリスの足に深い傷を与えた。
「そんな障壁で俺の攻撃が止められるものか!」
バルザークはさらに剣を振るいエリスの腹部に大きな切り傷を与えた。
「あがっ」
口から血を吐き出し倒れるエリス。
「エリス!! それにみんな!」
血を流しながら倒れるみんなを見て叫ぶラフィネ。
そしてバルザークをキッと睨みつけ叫んだ。
「――許さい!!」
その瞬間、ラフィネから膨大な光の魔力が噴き上がった。
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