第44話:出発

ミレーティアが一緒に付いてくることが決まり、現在は母であるウォースパイトと一緒に支度をしていた。

その間、レイドとリリスはアルミラースに連れられて宝物庫へとやって来ていた。


「それで我の鱗は回収してあるのか?」

「しっかりと回収した。思ったより量が多かった」

「それだけレイドとの戦いが激しかったということだ。大事に使うのだぞ」

「もちろんだ」


宝物庫の扉が開けられる。


眩しい。そう錯覚するほどの光が視界を遮った。

そして目が慣れ宝物庫の中が露わとなる。


「凄い……」


リリスが宝物庫の中を見てそう言葉を零した。


中は金銀財宝の山に国宝並みの防具や武器の数々。

売れば人生を何回も遊んで暮らせるほどの額が手に入るだろう。だが、そんなことにレイドは一切の興味がなかった。

だって人生は一度きりなのだから。


中を物色して必要になりそうな素材を見つけていく。

リリスは一人で中を歩き見ていた。


しばらくしてレイドはリリスを連れてアルミラースの元へと向かった。


「終わったのか?」

「ああ。これが欲しいんだが」


そう言って必要だろう素材を見せる。

レイドが持って来たのはオリハルコンに魔物の素材などであった。

どれも簡単には手に入らない際材ばかり。中にはドラゴンの始祖とも言われるほどの牙も混じっていた。


「ほう。始祖の龍エンシェントドラゴンの牙か」

「不味かったか?」

「なに、それを素材にするのが驚いただけだ。加工は難しいぞ?」

「わかったる。でが加工ができて武器にできたら最高だろ?」

「ドラゴンの牙は全てを噛み砕くと言われているし、事実その通りだ。それに私が持っていたところで使い道などない。使われた方が本望だろ」

「そう言ってもらえると助かる」

「では戻るとしよう」


そこでアルミラースは「そうだ」と言ってから口にする。


「武器なら素材を使えば我の魔法で作れるがどうする?」

「……いいのか?」


レイドにとっては願ったり叶ったりであった。


「任せるがいい。最高の武器を作ってやろう。それとレイドの魔力を少々借りるが良いか?」

「構わない。武器を作ってくれるんだしな」

「早速作りに掛かるとしよう。工房があるからそこで行おう」


こうしてレイドとアルミラース、リリスは城の工房へと向かった。

工房にはすぐに着きアルミラースへとリリスが尋ねた。


「なぜ工房が?」

「一時期趣味で武器を作っておってな。錬成魔法と創造魔法を使って武器を作っていたのだ」


錬成は加工やポーションなどの製作が出来る魔法で、創造魔法は思い浮かべた物を作れる魔法だ。

創造魔法は失われた魔法として語り継がれていたがアルミラースは使えていたのだ。


「創造魔法は失われた魔法」

「そうなのか。我が生きていた時代ではよく鍛治師が使っていたがな」


そしてアルミラースは素材を魔法陣が絵描かれたテーブルへと向き合うと素材を並べた。


「レイド、どんな武器が良いのだ?」

「そうだな。大剣か普通サイズの剣が望ましいな」

「そうか。なら意思で形状を変えられる剣がいいか」

「出来るのか?」

「誰に言っている。これでも鍛治の腕前は当時では随一と言われたいのだ。それに我は龍王だ。これくらい容易い」

「頼もしい限りだ。それと俺の魔力はいつ必要になる」

「我が合図した時に武器へと流し込んでくれ」

「分かった」

「では始める」


こうして武器の製作が始まった。

言われた通りの合図で魔力を流し込みんだ。

数時間して武器は完成した。


「完成した」


そう言って魔法陣が描かれた魔法陣の輝きが収まり、完成した武器が露わとなった。


一言で言い表すならばそれは――漆黒の剣であった。

だが感じる力は強大で異常の一言であった。


今の見た目は大剣ではなく普通サイズの剣だ。だが所々に派手過ぎないほどの装飾が施されていた。


「所有者はレイドにしてある。他の者には扱う事は出来ない。それと能力は――」


詳しい武器の説明を聞き外で試したあと、アルミラースへと向き直った。


「ありがとう」

「気にするな。我にとっても今まで作ってきた物の中で一番の傑作だ。聖剣よりも強力な筈だ」


言葉の通り、通常モードの剣でも威力は凄まじかった。大剣モードも同様に範囲攻撃なども出来、化け物レベルの魔剣の出来上がりであった。

それもレイドの力を限界まで引き出してくれるのだ。


「それは頼もしい限りだ」

「フハハハッ!」


こうして武器の製作と試しが終わりレイドは新たな剣を手に入れた。

そしてアルミラースの言う通り、レイドの手に入れた剣は聖剣すら上回る最強の魔剣であったのだった。



……


…………


………………



――翌日。


準備が整い出発しようとしていたが、アルミラースが待ったをかけた。


「待てレイド」

「なんだ?」

「近くまで乗せていこう。ミレーティアはまだ小さいから人を乗せられないからな」

「いいのか?」

「構わない。友と娘のためだ」

「ならお言葉に甘えようかな」


龍の姿になったアルミラースの背中に乗り飛び立とうとしていた。

そこへウォースパイトがミレーティアへと。


「気を付けて。それと楽しんでね」

「うん。ママ!」


次にレイドへと。


「娘をよろしくお願いするわ」

「ああ、しっかり守ると約束しよう」

「ええ、それじゃあまた。いつでも来なさい。歓迎するわ」

「わかった。また来よう」

「ありがとう。あなた、よろしくね」

「任せるがいい」


そうしてレイド達はアルミラースの背に乗り暗黒山脈を後にした。


そして魔王城へと戻ったレイド達は驚きの光景を目にするのであった。

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