三章

第45話:玉座の間にて

 レイド達が魔王城へと帰る二日前。

 魔王城の玉座の間にて激震が走った。


「それは本当なのか!?」


 緊急の伝令にきた魔族の男へとそう言葉を投げかけた。

 声を震わせながらも男は答えた。


「じ、事実でございます。人間軍総勢1万5千名がこの魔王城に向けて進軍しております」


 玉座の間がざわつくが、フランは手で制すと静まり返る。


「到着までにあとどれくらいの日数がかかる?」

「はい。このままの進軍速度ですと恐らく明日の夜に、かと……」

「何故報告が遅れた? 偵察部隊は何をしていたのだ?」


 フランから放たれるプレッシャーに、男は顔を青くさせながらも答えた。


「わ、わかりません。ですが偵察部隊からの報告が途切れたのは昨日の夜の事です。報告が途切れその場所まで確認したところ、人間軍がすでに魔族領へと……」

「偵察部隊がバレ、殺られた可能性はあるな」


 フランの言う通り、偵察部隊は人間軍に見つかり殺されていた。

 逃げようにしても退路を完全に断たれ囲まれていたのである。


「どうなさいますか魔王様?」


 イリーナがフランに尋ねる。


「各主要な砦の防備を固めたのが仇となったか。招集するにしてもその隙に砦が攻められる可能性もある」


 思考を巡らせ最善策を考える。

 そこにバルザークが魔王城を落とさせないための安全策を提案する。


「魔王様、人間軍が攻めてくるには森を抜ける必要があります」

「そうだ」

「そこで、森を抜けた先で待ち構えてはいかがでしょうか? 森には魔物の扱いに長けた者達を送り込み、周囲の魔物をあらかじめ洗脳をかけ、人間軍が森を抜ける手前でぶつけます。これが成功すれば敵の戦力は大幅に下がるはずです。いかがでしょうか?」

「ふむ……」


 数秒の思考を経て口を開く。


「悪くない策だ。では先陣をバルザークの指揮する軍に、後衛はイリーナの魔法部隊でそれを援護するのだ。リリスはまだ帰っておらぬ。だからその指揮をベノン、お前に託す。いいな?」

「畏まりました」

「各砦にも伝令を飛ばせ。魔王城よりも砦の防備を固め、警戒しろと」

「分かりました」


 ベノンは返事をし一礼する。

 そしてフランは玉座から立ち上がった。


「では同胞達よ、我らが領土に土足で足を踏み入れた愚か者共を後悔させてやれ!」

「「「はっ!」」」


 一斉に膝を突き、始まる戦いへと備えるのであった。

 フランは誰も居なくなった玉座の間で、未だに帰らないレイドへと言葉を告げた。


「レイド、早く帰ってきてくれ……」




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