第39話:白亜の城へ

 極限突破が解除されレイドは膝を突いた。


「レイドッ!」

「くっ、流石に無理をしすぎたか……」

「大丈夫?!」


 リリスが慌ててレイドに駆け寄った。


「ああ、だがしばらくは動けそうにないな」

「頑張った」

「ああ、無理をし過ぎたな……」


 限界突破を解いたアルミラースが突如光り輝き、黒い霧が全体を覆った。


「……なに?」


 リリスはアルミラースの方を訝しむ表情で見つめ警戒する。

 レイドも同様に警戒しながら見つめる。

 今のレイドは体を酷使しすぎたので何も出来ない。動こうとしても体が動かないのである。


 しばらくして黒い霧が霧散しそこから現れたのは――目鼻顔立ちが整った見た目30代の男であった。

 黒く短い髪に紅いメッシュが入り、その頭には黒い角。服装は黒と赤の混じった軽鎧に紅いマント。

 漂う風格はまさに王であった。


 そしてその者はどさりと地面に尻餅をついて荒い呼吸をする。


「お前、もしかして……」


 レイドの質問にその者は答えた。


「我はアルミラースだ」

「……人になれたの?」

「無論だ。魔族の娘よ。古き時を生きた龍は人の姿になれる」

「……初めて知った」

「そうか。それで、レイドよ」

「……なんだ?」


 名前を呼ばれたレイドは胡乱げな眼差しを向ける。


「動けるか?」

「見て分かってくれ。極限突破の影響でしばらくは動けない」

「で、あるか……レイド、何しにここへ? 本当に我の鱗が欲しいと?」


 最初にも尋ねられた事を尋ねられた。


「そうだ。武器が貧弱で俺の力に耐えられないからな。まあ基本は格闘戦だが武器があった方が牽制になるからな。ある程度の敵なら剣があればなんとかなる」

「そうか。なら先の戦闘で剥がれた鱗を持っていくがよい。またすぐに生え変わる」

「いいのか?」

「構わない。要らないのか?」

「いや、それなら貰うよ。てか俺を殺さなくていいのか?」


 その言葉に睨むアルミラース。すぐにリリスがレイドを守ろうと前に歩みでる。


「レイドは私が守る。それが魔王様の頼みでもあるから」


 だがリリスはアルミラースの実力を知っているからなのか僅かに体が震えていた。

 ジッとリリスを睨むアルミラースだったが、ふっと笑みを浮かべた。


「そんなことはしない。我はそなたを認めたのだ」

「認めた?」


 レイドは聞き返した。


「その通りだ。我と引き分けたのだ。認めるしかあるまい」

「そうか。ところであの城は?」


 レイドとリリスは山頂にそびえたつ白亜の城を見やった。

 アルミラースも視線に釣られて見ながら答える。


「あれは我の城だ。そうだな。動けるようになったら城に案内しよう。そろそろ日が暮れる。泊まっていくと良い。妻が料理を作って待っているころだ」

「やっぱりそうなのか。てか妻?」

「ああ。我妻は美人だぞ」


 なんか惚気始めたアルミラース。

 しばらくして体力が回復した三人は、アルミラースの背中に乗って城へと移動するのだった。



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