第38話:決着
静寂が辺りを支配する。
先に動いたのはアルミラースであった。
ここで先に動かなければ負けるのはアルミラース方だと自覚していたからである。
展開される魔法陣。そのどれもが最上位魔法を超えるほどの魔力量が込められていた。
数百にも及ぶ魔法陣が周囲を彩り――放たれた。
様々な属性の魔法がレイドへと迫り大爆発を引き起こした。
地形が変わるほどの爆発と爆炎がレイドを包み込む。
少しし爆炎が晴れると、そこにレイドの姿は無かった。
『どこに――ッ!? そこか!』
正面真下にレイドの姿があり、鋭い鉤爪を振り下ろした。アルミラースの攻撃をレイドは横に避けることで回避するが、すぐに正面には尻尾が迫っていた。
その尻尾を跳躍して回避したが……。
『――消えろ!』
ノータイムで放たれる凶悪ですべてを消し去る死のブレスが、空中にいるレイドへと放たれる。
流石にブレスを避けれるほどの時間は残っていない。
ならばとレイドが取った行動は一つであった。
「断る」
握り締めた拳を突き放った。
魔力を伴ったレーザーの様なビームが拳から放たれブレスと拮抗してみせた。
だがアルミラースは驚かなかった。今までのレイドならばこれくらい出来たからだった。
しばらく拮抗した後、互いの中間地点で爆発し砂塵が周囲を覆った。
『そこか!』
だが砂塵の中からレイドの気配を感知しすぐさま鉤爪による斬撃を放つも空を切った。
「――腹がガラ空きだ」
ズドンッという鈍く重い音を響かせアルミラースの腹部へと突き刺さった。
衝撃がアルミラースの体内を駆け巡る。
『ぐっ、はっ……!!』
腹部の龍鱗が剥がれ落ちる。
「まだだぞ?」
レイドは続けて蹴りを放ちその巨体を上空へと打ち上げた。
『ふぐぁっ!?』
吹き飛ばされたアルミラースは上空で態勢を立て直し滞空しレイドの方を見るが――姿が消えていた。
そして自身の真上で感じる膨大な魔力。
『しまっ――』
「残念だったな。これで終わりだ」
アルミラースのさらに上へと空気を足場に立つレイドは、自身の拳へと集まる魔力と気を圧縮させていく。
その光景を見たアルミラースは冷や汗を流す。
この攻撃を喰らっては最強のドラゴンと言えどタダでは済まないの感じたからである。
レイドは圧縮させた膨大な魔力を――解き放った。
振り抜かれた拳から魔力と気が混ざった何かが解き放たれアルミラースを飲み込んだ。
そのまま地上まで落とされたアルミラース。
地面には大きなクレーターを作りさらに降り注ぐ攻撃。
『ぐっ、ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!!』
悲痛な叫び声を上げるアルミラース。
数秒、あるいは数十秒が経過し攻撃は止み、レイドは地上に降りアルミラースの方を見つめる。
ボロボロとなったアルミラース。
立ち上がる気配は感じない。
「勝っ――」
勝った。そう言おうとしたレイドであったが、声が聞こえた。
『くっ、まさか、ここまでやられるとは……』
ボロボロで傷だらけなのにも関わらず、アルミラースはゆっくりとだが立ち上がった。
「あれを喰らってまだ戦えるのか……」
レイドの言葉をアルミラースは否定した。
『いや。我はもう戦えない』
「何故だ?」
『魔力が底を尽きる。限界突破をしたのにも関わらずだ。それに限界突破の影響で体が限界を迎えている。それは貴様、レイドも同様なはずだ』
アルミラースの言葉にレイドは同意した。
「ああ。限界突破のみならず、極限突破をしたんだ。すでに限界を超えている」
『そうか。これは』
「ああ」
「「引き分け、か」」
『だな』
「ああ」
こうして最も神に近いと言われる最強のドラゴン。煉獄龍王アルミラースとの勝負は引き分けで終わるのであった。
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