第30話:煉獄龍王アルミラース
レイドとリリスの二人は霧に惑わされることなく無事に抜けることができた。
だが朝出たはずだったのに頭上には太陽が昇っており爛々と照らしていた。
霧を抜けて標高も一段と高くなっていた。
二人がいる場所の標高は8000メートルであり、暗黒山脈の山頂までの標高は1万メートルだ。ここからしばらく登れば山頂となる。
酸素濃度が薄い山を二人は登る。
登ると言ってもリリスが使役する陸上の魔物の上に乗っているだけではあるが。
そのまま二人は進む。
「早めにどこかで野営をしよう」
「……どうして?」
「龍王と戦うことになるのなら万全の状態にしておきたい」
「たしかにその通り。わかった」
リリスは頷き二人は野営できる場所を探すのであった。
――翌日。
陽が昇り少しして二人は山頂を目指す。
「戦闘になったらリリスは下がっていろ」
「わかった。そもそも私は龍王と戦っても相手にもならない」
「そうかもしれない。だが俺が逃げろと言ったらすぐに逃げろ」
「言われなくてもそうする」
歩いて暫し、山頂が見えてきた。
そして――陽の光を反射するかのような巨大な白亜の城が堂々とそびえ立っていた。
「綺麗」
「だな。まさか本当に城があるとは」
「御伽噺は本当だった」
まさしく圧巻の一言。
だがそこで気が付いた。
フランは山頂に来る途中で龍王と戦ったと聞く。だがレイドとリリスはいままで戦って来なかった。
ならどこにいるのかと問われれば――それすなわち目の前の巨大な城である。
ここが奴の居城なのだろう。
どうやって作られたかと問われてもレイドとリリスには分からない。
「……入ってみる?」
「そうだな――いや。どうやら向こうからお出迎えのようだぞ」
「そうみたい」
瞬間、強大な気配を感じ空を見上げると巨大な火球がレイドとリリスへと迫った。
火球の直径は10メートル。
飛来する速度が早く、二人の視界のほとんどを覆っていた。
大剣を抜くにも間に合わないと判断したレイドは拳に魔力を流し気合一発。
正拳突きのように拳を放った。
並大抵の魔力と攻撃では相殺はどころかこちらが一方的に大ダメージを受けてしまう。
拳によって発生した魔力の衝撃波と火球が衝突し爆発した。
爆炎で彩られる中、煙の向こうから翼を羽ばたく音と共に勇壮で腹の底に響く低い声が聞こえてきた。
『ほう、我の攻撃を相殺するとは……貴様、一体何者だ?』
翼によって発生した風によって煙が晴れ、その姿が顕わとなった。
露わとなったのは、巨大で勇壮な漆黒のドラゴンであった。
漆黒の竜鱗が陽の光を反射し光り輝く。
その竜鱗はまるで黒曜石のような綺麗な黒であった。全てを見通しているような鋭く射貫く様な金色の竜眼が二人を――いや。正確には火球を相殺したレイドを睨んでいた。
『む? その気配。貴様、さては人間だな? そして隣にいるのは魔族の娘か』
漆黒のドラゴンの質問にレイドは簡潔に一言で答えた。
「そうだ」
『そうか。ここまで来たからには名乗ってやろう。我が名は煉獄龍王アルミラース。この暗黒山脈の支配者である。では貴様も名乗ってもらおう』
「俺の名はレイド。レイド・エーアストだ。隣にいるのはリリスだ」
『ではレイドに問おう。何しにここまで来た? 死にに来たわけではあるまい?』
目の前の黒龍は自身のことを煉獄龍王アルミラースと名乗った。
ならばレイドの目的は一つだった。
「――貴様のその鱗、置いて行ってもらおう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。