第29話:霧の魔物Ⅲ
翌日。
「――
リリスがそう魔法名を紡ぐと一体の鷲を巨大化したような魔物が召喚陣から現れた。
「この子に乗っていく」
「了解だ。だがコイツは死んでいるのか?」
レイドの質問にリリスは答えた。
「そう。フォレストイーグルと言われる飛行型の魔物」
「そこそこ強い部類の魔物だな」
そうして二人はフォレストイーグルの背中に乗り上空へと飛んだ。
空には飛行型の魔物がいるもレイドとリリスの敵では無い、襲ってくる魔物は斬撃またはリリスの魔法で迎撃して倒していく。
倒した魔物はリリスの死霊魔法で使役され召喚陣へと吸い込まれていく。
欠損していても再び召喚するときには再生されているので心配はいらない。
だが倒される、というよりは致命傷ほどの攻撃は再生されず、霧散するようにして消えてしまうのだ。
それはさておき、二人は霧がある上空へとやってきた。
順調に進んでいたが半分の距離まできた瞬間、霧の中から触手のようなモノが伸びてこちらへと向かってくる。
「避けて」
リリスがフォレストイーグルへと命令し襲ってくる触手を次々と回避していく。
「リリス、この触手はもしかして」
「多分そう」
次第に襲ってくる触手の数が多くなっていき、フォレストイーグルでは回避が困難になっていった。
そして遂に――触手を避けきれずフォレストイーグルの足を掴み取った。
そのまま引きずり込むように霧の中へと引き込まれていく。
次々と触手が巻きつき脱出は不可能。
「リリス、まだ飛行の魔物はいるか?」
リリスは首を横に振って答えた
「いるけど一人を運ぶのが限界」
「わかった。なら奴を倒すしかないな」
「ごめん」
「謝るな。元々こうなることも予想していただろ。行くぞ、このまま飛び降りる」
「わかった。けどこの高さからは……」
「仕方ない。掴まれ」
「ん」
リリスはレイドの服のお裾を掴んだがそういう意味では無い。服を掴んだ程度では意味がない。
「もっとしっかり掴まれ。落ちたいのか」
レイドは大剣を握る手とは別の手でリリスを抱き寄せた。
「……っ⁉︎」
リリスはレイドに抱き寄せられたことで頬を朱色に染め、レイドの方を驚きの表情で見やったが気がついていない。
「行くぞ」
そう言ってレイドはフォレストイーグルの背中から飛び降りた。
降下しているときにも触手は襲ってくるが、大剣で斬り捨てながら落下していく。地面に着地する。
「リリス大丈夫か?」
「大丈夫。レイドのお陰」
「よかった。それよりもこの触手をどうにかしないとな」
「たしかに」
二人して未だに触手が伸びてくる方向を見据えた。
「私が?」
「いや、ここは俺がやる」
大剣に魔力を流して振るうと、斬撃が襲いかかってくる触手を切り捨てながら突き進む。
そのまま一直線に進が手応えはなかった。
「無駄である。汝の攻撃は届かない」
奴の声が聞こえ再び襲ってくる無数の触手。
「キリがないな」
「レイド、大丈夫?」
「ああ、心配いらない」
再び大剣に先程以上の魔力を込めて数度振るい斬撃を飛ばす。
「――ぐぁっ⁉」
少しして奴の声が聞こえてきた。
どうやら直撃したようだ。
何故ダメージを与えられたか不明だが、レイドは魔力を多く込めたからだと推測した。
「な、何故汝の攻撃が我に当たったのだ」
そんなことを言いながら姿を現した。
腕が消えていたが、みるみるうちに再生していた。
奴はもしかしたら魔力が多く込められたのが弱点なのではなかろうか?
そう思ったレイドは再び多めの魔力を込めた斬撃を放った。
「無駄である。先程はまぐれ――あがぁっ⁉︎」
今度は再生したのとは逆の腕を吹き飛ばされ苦悶の声を上げる敵。
そして攻略方法を掴んだレイド。
「な、何故だ。いやだが、我は不死身である」
「そうか。今度は生きていられるといいな」
そう告げて膨大な魔力を込めた数百という斬撃を放つ。
斬撃はそのまま奴を刻んでいきチリとなって消えてしまった。
しばらく待っても再生はおろか、気配すら感じない。
どうやら死んだようである。
「倒した?」
「ああ、気配はなくなったな」
「たしかに」
「行くか。先を急がないとな」
「ん」
こうしてレイドとリリスの二人は前に進むのであった。
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