第31話:ライネール王国の動き

レイドとリリスが暗黒山脈へと飛びだって四日。

ライネール王国のとある一室にて国王、カルロア・ゼン・ライネールは大臣達と軍の参謀達を招集して会議を行なっていた。


「では次の魔族領への侵攻についてだ」


国王がそう尋ねると一人の大臣が挙手をした。


「発言を」

「許可しよう。申せ」

「はっ。では恐れながら申させていただきます。今回の侵攻は大規模の方が良いと思っております」

「大規模とな?」


国王の言葉に大臣が頷いた。


「はい。主要となる砦を攻めるのではなく、直接魔王城へと

せめいるのです」

「勝てるのか? 四天王は強いと聞く」

「こちらには聖剣を持たなかったレイドとは違い、聖剣を

持つ勇者ラフィネがおります。四天王達は軍で当たれば足止めは出来ましょう。偵察によりますと前回の砦への侵攻で、各主要砦の防備が堅牢になったと聞きます。ならば魔王城がある王都の防備は兵を砦の防衛に割いたことで少なくなっているでしょう。救援に駆けつけたとしても近くの砦からでも数日はかかります。私からは以上です」


話し終えた大臣は頭を下げて席へと着いた。

大臣の提案に国王は頷き周囲の反応を確認する。


周りの大臣や参謀達も頷き口々に賛成の意を示した。

だが一人の者がとある問題を口にした。


「ノワールはどうなるのですか?」


そう口にしたのはラフィネであった。

ほとんどの作戦にラフィネは必須の存在となっていた。

そうでもしなければ魔王軍には対抗できないからでもあった。


ラフィネの言葉にライネール国王は答えた。


「正直奴が出てきたところでこの大軍には何もできまい」

「ですが……!」

「安心しろ。奴が戦場へ現れたら俺の軍が相手してやる。勇者殿はそのまま魔王を倒してくれば良い」

「……わかりました」


不服な表情をするラフィネはこれ以上何を言っても意味がないとわかり、何も言わなかった。それに今回の作戦は理にかなってる。

魔王を倒すチャンスが回ってきたのだ。これを機に動かなければチャンスは潰える可能性があった。


「では作戦の会議と侵攻日について決めようではないか」


こうして作戦が練られていき時間が過ぎていくのであった。


会議が終わり自室へと戻ったラフィネ。

ベッドで横になり目を瞑り考える。


今回の侵攻は確かにチャンスである。だがそれよりも嫌な予感がしてならなかったのだ。


それに自分が勇者に選定されてからは魔族に押されてるように見えた。確かに強くはなっているはず。なのに戦況が悪くなっていく一方であった。


「……何がいけないの?」


一人誰にもいない虚空へと言葉を投げかけた。

その問いは他でもない自分に投げかけたことであった。


ノワールと言われる圧倒的な強さを誇る化け物。

あれが人間だったことにラフィネは驚きを隠せないでいた。どうしたらあそこまで強くなれるのだろうかと。


ラフィネはそのまま眠りに就くのであった。



レイドとリリスが出て二週間後。

人間軍総勢1万5千名は魔王城へと進軍を始めた。


魔王城到着まで残り四日となるのであった。



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