第27話:霧の魔物Ⅰ
翌日。
レイドとリリスの二人はついに霧の前へとやってきた。
一見霧のように見えるが、これは魔力が濃いからできたものだ。
「少し試してみるから離れていてくれ」
「わかった」
距離を取ったリリスを確認し、レイドは背負っている大剣を抜いて構えた。
「どうする気?」
リリスの質問にレイドは行動で答えた。
「こうするんだよっ!」
気合一発一閃。
レイドは思いっきり大剣を横一文字に振り払った。
すると風が巻き起こり一閃した場所の霧が消えていく。
レイドは昨晩、物理的に霧を切り払うと思い至ったのだ。
それ以外に出来る事が無いからである。
「よし。行くか――なっ!?」
進もうとしたレイドは驚きのあまり足を止めてしまった。
リリスも目を見開き驚いていた。
二人が驚いた理由。それは――霧がすぐに元に戻ったからである。
再び閉ざされる道。
「なら今度は」
「まだあるの?」
「これがダメなら諦める」
そう告げたレイドは大剣を地面に突き刺し両手を空いた状態にして拳を構えた。
意識を一点に集中させ――
「――ハァッ!!」
気合の声と共に拳を突き出した。
衝撃波が霧へとぶつかり消し飛ばしていく。
先ほど放ったものは一点突破の衝撃波。しばらくすると霧の向こう側が薄っすらとだが視認出来た。
「見えた。一気に走るから背中に乗れ」
「……? どういう意味?」
「俺にリリスを背負わせろ」
「……わかった」
薄っすらとリリスの頬が朱色に染まる。
そんなことに気が付かないレイドはリリスを背負うと、足に力を込めて一気に加速した。
一瞬で100メートル程の距離を移動し次第に早くなっていく。
そして霧の中間地点まで来た途端、霧が進路を閉ざしだした。
「ちっ」
「だけど半分まで来た」
「そうだな。そう考えた方がいいか」
「うん」
突如、立ち止まったレイドは敵意を向けられてた感覚があった。
その敵意の方向はすぐ真後ろだった。
一瞬で前方へと飛び退き後ろを確認するが濃霧のせいで敵の視界に捉えられない。
「リリス、敵だ」
「ん」
背中から下ろし二人は背を預けるような形を取る。
「衝撃波を飛ばして一時的にだが視界を確保する」
「わかった」
「衝撃に備えろよ!」
そう告げてからレイドを中心とした衝撃波が円周状に広がり霧を吹き飛ばした。
「おいおい、いつの間に……」
「囲まれてる」
リリスの言う通り二人は形容しがたい人型の様な魔物に囲まれていた。
レイドは初めて見る魔物を見てリリスに尋ねる。
「リリス、魔物の名前は分かるか?」
「わからない。私も初めて見る魔物」
正体不明の陽炎のようなゆらゆらとした魔物。
レイドが大剣を横に一閃し消し去るが――再び現れた。
「再生した?」
「そんな魔物聞いたことない」
困惑していると何処からともなく声が聞こえてきた。
「惑えや惑え。汝らに永遠の迷いを」
その声の主は――目の前で二人を囲む魔物からであった。
「魔物が、喋った……?」
「そんなの聞いた事が無い」
「だが」
「喋った」
驚きも束の間、目の前の囲む魔物の周囲に氷の槍が形成されていった。
「魔法か?」
「恐らく」
リリスがその光景を目に呟く。
「汝らに死を」
襲い掛かる氷の槍をレイドは大剣で切り裂き時には薙ぎ払い、リリスは得意の死霊魔法で虚空から亀形の魔物を呼び出し防御していた。
無限のように生成されては放たれる槍を前に二人は打開策を考えるのだった。
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