第26話:霧の情報
暗黒山脈を登り始めて一時間。
登りながら山頂を見据えるが雲がかかっており一向に見えないでいた。
「リリス、山頂には毎回雲がかかっているのか?」
「雲じゃない」
レイドにはリリスの言っている意味が分からなかった。
レイドの目に映るのはどう見ても雲である。
「ならなんだ?」
「魔力で出来た霧。暗黒山脈の山頂は空気が薄い代わりに魔力の濃度が高くて霧状になっている」
「雲を抜けたらどうなる?」
「わからない。誰も知らない。魔王様ですら霧を抜けてすぐ、たまたま暗黒龍王アルミラースに見つかったからその先を知らない。ただ……」
リリスは続けた。
「山頂には龍王の居城があるという言い伝えが残っている」
「居城か」
レイドの繰り返した言葉にリリスは「そう」と頷いた。
居城があるというならそれは大きな城なのだろう。
他には何かわからないかと、主にその魔力で出来た霧についてリリスに尋ねると、知っていたらしく答えてくれた。
「その霧に棲む魔物のどれもが強力な個体ばかり」
「そうか」
二人は魔物を倒しながら山を登る。
だが、その道のりは険しい。山頂まであと数日はかかるだろう。
陽が落ちて辺りが暗くなってきた。
野営する場所を探すが魔物の出現が多くゆっくりできそうな場所が見当たらない。
どうしようか。そうレイドが考えているとリリスがレイドの服の裾を摘まんできた。
「どうした?」
「あそこ」
リリスが指を指す方向を見ると、そこには小さな穴の様なものが出来ていた。
「確認してみよう。魔物がいなければ今晩はあそこで野営をしよう」
「ん」
二人は穴になっている場所に向かい中を覗くが暗くて何も見えない。
「――
リリスが魔法を唱えると火の光源が現れ中をある程度見渡せるようになった。
するとこの穴は奥まで続いているように見えた。
「確認してこよう」
「わかった。付いて行く」
「助かる」
流石に暗い場所にはレイドもすぐに反応が出来ない。
唯一暗い場所で頼りになるのは気配のみであった。
ゆっくりと歩を進めるが、どうやらこの穴は洞窟のようであった。
自然に出来た洞窟か、魔物が作った洞窟なのか。
リリスにどうするかを確認してみる。
独断で進むのは不味いと判断したからである。
「どうする? このまま探索するか?」
「しない方がいい、かも」
「そうだな。この穴なら大きな魔物がいることも少ない」
「ん」
二人は戻って入り口と後方をリリスの魔法で塞ぎ安全を確保した。
もし小型の魔物がいたのなら倒せばいい。
それに襲ってくる前にはこの防壁を破らなければならない。その前に気配や防壁への攻撃を察知できるので、そこからでも対処は可能だ。
強力な魔物でもない限りリリスの防御をやすやすと突破することは不可能だろう。
そうしてレイドとリリスの二人は夕食を済ませ、明日の予定を話す。
「明日には霧に入ると思うか?」
「恐らく。このままのペースならそうなる」
「そうか。なら霧を突破したいが厳しいと思うか?」
しばらく悩んだリリスは口を開く。
「わからない。霧の中に棲む魔物は厄介と魔王様が言っていた」
「わかった。どうするか少し考えてから俺は寝る」
「ん。私は先に寝る」
「ああ、おやすみ」
「……おやすみ」
リリスは先に寝てしまった。
レイドも横になり霧の突破を考えながら眠りにつくのだった。
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