第12話:ベリューレン砦

 それから一日の間に準備が整いレイドとイリーナを含めた部隊、総勢千名がベリューレン砦へと向かった。


 徒歩で二日の距離だ。ベリューレン砦にはイリーナの部隊が向かっていることを知らせる者を先に向かわせている。


 半日ほど経過したが特に戦闘が起きるといったことがなかった。そのまま二日が経過してレイド達はベリューレン砦に到着した。

 すると砦の門が開き金髪の長髪を後ろで一結びにしたした一人の女性魔族が現れた。

 とても若い。


 だが魔族の寿命は長い。そう見えてしまうのは仕方がない事だった。


 そしてこの人物こそ、ベリューレン砦を任された魔王軍の実力者の一人、槍使いのフィオーラであった。


 フィオーラはイリーナを見て頭を下げる。


「まさかイリーナ様自ら援軍に来ていただけるとは……感謝します!」

「気にするな。魔王様の命令だからな」

「そうでしたか。それでその仮面を付けた人物は?」


 フィオーラの視線はイリーナの隣に立つレイドへと向けられていた。


「この者はレイド・エーアスト。この度魔王様の伴侶、夫となられた者だ」

「夫っ!?」


 フィオーラは目玉が飛び出んばかりに驚いていた。


「お、夫って……本当なのですか?」

「事実だ」

「自分より強い者しか認めないと言っていたお方がですか?」

「残念ながら魔王様よりもこのレイドという男は強い」

「魔王様よりも? いくら何でもそれは――」

「この目でしかと確認している。二人の激しい戦闘をな。一人で魔王城に乗り込み四天王を含めた猛者達を倒してもいる」


 まさに絶句だった。

 レイドも何も喋らないのは失礼かと思い自己紹介をする。


「レイド・エーアストだ。レイドと呼んでくれて構わない」

「あ、ああ。私はフィオーラ。何より頼もしい援軍だ。感謝する。みなも疲れただろう。中に入って休んでくれ。すまないがイリーナ様とレイドさんはこちらに来ていただきたい。お二人の話を聞きたいので」


 フィオーラの言葉に頷き一同は砦の中へと入るのだった。

 レイドとイリーナは砦の最上階の一室へと通された。中には地図が広げられており、他にも数眼の魔族達が話し込んでいた。


 そこに入ってきたレイド、イリーナに視線が一斉に注がれすぐに誰なのかと知って頭を下げた。


「今回来てもらった援軍だ」

「援軍!? 数は!」


 その言葉にはイリーナが答えた。


「数は千名だ。私の魔法部隊に加えてバルザークの精鋭達だ」

「せ、千名!? 相手は5千なんですよ!? その程度の数では――」

「問題ない」


 ベリューレン砦の参謀だろう人物へとレイドはそう告げた。

 バッと視線がレイドへと移る。


「誰ですか? そのような仮面を付けて。それに何を根拠にそのような事が言えるのですか? 相手は5千ですよ?」

「俺はレイド。つい最近魔王フランと結婚した者だ」

「……は? 嘘はほどほどにしておいて下さい。イリーナ様も何か言ってください」


 話を振られたイリーナだったが、顔を横に振ってから「事実だ」と口にした。


「ま、まさか。この様な者がですか!?」

「ああ。魔王様はレイドと結婚してから毎日が幸せそうだ。魔王様がそれでいいなら私は何も言うことは無い」

「で、ですが――」

「黙れ!」


 イリーナの怒声で参謀は黙りこくってしまう。


 女ってのは怖いな。そう思うレイドだった。




「ではレイド、説明してくれ」

「ああ」


 こうしてレイドは援軍が少ない理由を説明する。

 しばらくして説明が終えると、フィオーラが口にする。


「それは本当か?」

「確かだ。個々の強さは三~四人分の戦力に匹敵する。一人三人ば殺れば勝てる計算だ」

「んな適当な!」


 これはレイドが魔族一人一人の力を見てそう評価した結果だ。

 人間よりも人数が少ないは魔族は一人一人が強い。だから出来る作戦である。


「時間もない。このまま作戦を立てる」


 レイドの言葉に反対する者はいなかった。

 敵がここまであと一日という距離にまで迫っているのだから。


 何人もがどうするかを作戦を提案するが、どれも人間であるレイドからしてはバレそうなものばかりであった。唯一まともな背苦戦を提案したのはイリーナだった。


 流石四天王というべきだろう。


「――という作戦なんだがどうだろうか?」

「敵に勇者がいたらそんな作戦は機能しないで失敗に終わる」

「ならどうしろと? レイドに考えでも?」


 レイドは地図を見ながら自分の考える作戦を説明する。


「俺の考える作戦は――」


 レイドが作戦を伝えると反対する者はいなく、むしろこの方が勝てる確率がグーンっと上昇するからか賛成していた。


「では後は罠の制作準備に入ろう」


 こうして一同は戦場となる戦場へと赴き罠などを仕掛けに入るのだった。



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