第11話:攻めくる人間軍
落ち着きを取り戻した魔王城の玉座の間。
「ではこのまま次の人間軍の侵攻に備えるための軍議に入るとしよう」
フランの言葉に賛同する魔族達。
「では何か案がある者は?」
「魔王様、今回は攻めないのですか?」
その言葉に多くの者が頷いていた。
「攻めない。あとはどう防衛をするかだ。人間軍の規模も気になるところだ」
全員が頭を悩ませていると、そこに伝令が入ってきた。
「無礼者! ここをどこだと思っている!」
一人の男性魔族が合図もなしに入ってきたことに対して叱咤した。
「も、申し訳ございません! ですが緊急事態です! 人間軍が総勢5千名もの軍勢で、東部に位置するベリューレン砦に向かって進行しているとのことです!」
騒がしくなる玉座の間。
「貴様、それは誠か?」
それが事実なのかとバルザークが問う。
「はっ! 斥候の者が進軍する人間軍を確認したとのことです。人間軍がベリューレン砦へと到着するのにあと四日ぐらいだと申しておりました」
「そうか。下がれ。ご苦労だった」
「はっ!」
伝令の者が下がり是認の視線がフランへと注がれる。
「……ベリューレン砦は魔王城があるこの街、ヴェンタールを守る主要砦の一つだ。そこを落とされてはここまで進行してくるのも時間の問題だろう」
「仰る通りかと。現在ベリューレン砦の守りにはフィオーラが配属されております。指揮能力には長けておりますが、現在の砦の人数は五百名しかおりません。籠城しても一週間が限界でしょう」
「で、あるか。ここからベリューレン砦までの日数は?」
「二日です」
フランは頷き立ち上がりこの場の全員へと言い放つ。
「急ぎ準備に取り掛かれ! 明日、ベリューレン砦に向けてバルザークの部隊総勢4千を出す。分かったな?」
「「「御意っ!!」」」
そこにレイドが口を開く。
「待てフラン」
「どうした?」
「そこまでの数は必要ない」
訝しむ視線を向けてくるフラン。
「どうして?」
「俺一人で行く――とは言わないが、千名だけで十分だ」
「何か考えがあるのか?」
「考えってほどではないが」
何故千名だけと告げたのか説明をする。
「人間の兵士は魔族と違い弱い。特筆した技もなく体のつくりも魔族よりも弱い。魔族一人に対して人間四人程度だろう。ならばそこまでの軍を派遣しなくても済み、防衛に回した方が効率が良いってことだ」
「……なるほど、それもそうだな。分かった。ではベリューレン砦にはイリーナを向かわせよう。いいな?」
「お任せください。必ずや守って見せましょう」
頭を垂れるイリーナ。
イリーナの魔法があれば撤退させることは可能だろう。
「待て。俺も付いて行く」
「レイドがか?」
イリーナに付いて行くといったレイドに驚きの表情を向けるフラン。
言いだしっぺなのだから付いて行くのは当然だろう。
そうフランに告げると残念な表情をしながらも納得してくれた。
「イリーナだったか? それでいいか?」
「え、ええ。それで構わないわ」
イリーナも俺の同行に問題はないようだった。
レイドの言葉にイリーナは内心で喜んでいた。
ここでレイドの本心を見抜くつもりだったからである。本当は人間側のつもりで、魔王を倒す機会をうかがっているのだと。そう思っていたのだ。
「ではイリーナの軍にバルザークからも手練れの兵を派遣するように」
「御意っ!」
「では解散だ」
玉座の間から出て行く面々に、四天王とレイド、フランだけが残っていた。
「まだ何かあるのか?」
「レイドに聞きたいのです」
「俺にか?」
レイドはイリーナの方に顔を向けた。
「信じていいのだな?」
「ああ、この戦力なら人間の軍を撃退出来る。前は俺が居たから勝てたようなものだ。今回は俺が魔族側にいる。なら負けはない。だが勇者であった俺が追放されたのに攻めてきた。新しい勇者がいる可能性も考慮した方がいいだろう。その場合は俺が勇者の相手をしよう」
「……わかった」
それだけ言うとイリーナは去ってしまった。
他の四天王も去り、レイドとフランも玉座の間を後にしたのだった。
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