第10話:元勇者、魔王軍に向かい入れられる

 修復された魔王城一室の寝室にレイドとフランの二人がいた。

 結婚した二人はそれはもう毎晩のようにイチャイチャしていた。


「んっ、もっとちょうらい……?」


 ベッドに寝そべるレイドの上にもたれ掛かかり甘い口調で耳元で囁くフラン。


「いや、もう無理。限界だ……」


 むぅ~と不満そうに頬を膨らませるフランだったが。


「仕方ない。今日はここまでにしておこう。またレイドの子種を頂かないとな」


 舌なめずりをし妖艶な笑みを浮かべレイドを見るフラン。いくら最強の元勇者だろうと、魔族の夜の営みには限界があった。


 主に精力だったが……


「程々にしてくれよ?」

「ふふっ、考えておこう。では行くぞ」


 ベットから起き上がり服を着たフランはレイドにも、早く起きて服を着るように伝える。

 さっさと服を来て部屋を出て行くフランの後を付いて行く。向かう場所は玉座の間であった。


「何をするんだ?」

「先ずはレイドの事をみんなに報告だな」

「で、何て言うんだ? 四天王にしたのと同じように言うのか?」

「いや、レイドが人間と言うことは隠すつもりだ。私と結婚したと言うだけだ」

「だが、それではまた四天王の時のように納得しない人が出てくる」


 レイドが抱く不安に、フランは笑いながら答えた。


「ははっ、問題するなレイド。魔族とは弱肉強食だ。魔王である私以上に強い者に対してどうこうする事が出来ん。魔族とは強者こそが絶対なのだ」

「そういうもんか」

「ああ。行くぞ」


 そのまま玉座の間に着くと四天王の他にも魔族がおり、魔王が来たのと同時に跪いた。

 だが魔王であるフランと、一緒にいる仮面とフードを被ったレイドへと訝しむ視線を向ける者が続出する。


「皆の者、面を上げよ」


 フランの言葉に顔を上げるもレイドを見たままである。

 その中で一人、フランへと言葉を投げかけたまだ若い魔族がいた。


「魔王陛下、一つお聞きしたいことがあります」

「む、なんだ? 申してみよ」

「はっ、では。魔王様のお隣にいる仮面を付けた者はどなたで?」

「うむ。今回はそのことで話そうと皆を招集した」


 一気にレイドへと視線が集まった。だがレイドの正体を知っている四天王の四人はフランだけを見ていた。


「この者はレイド・エーアスト。皆も知っている通りつい最近この魔王城へと単独で乗り込み、そこにいるバルザーク、ベノム、イリーナ、リリスの四天王を倒した者だ」


「「「「四天王を単独で……!?」」」」


 フランはさらに付け加えた。

 その言葉は衝撃を持って伝えられた。


「しかも本気のこの私を持っても敵わない相手だった」

「そ、それは本当なのですか?」

「本当だとも」

「何者、なのですか?」


 それは誰もが聞きたいことだった。

 レイドは仮面越しにフランを見る。


「レイドは――私、魔王フラン・ヴィレアーレの夫となった者だ」


 一瞬の静寂のち、驚愕の声が玉座の間に響き渡り四天王たちに本当なのか問いただした。

 その問いに答えたのはベノムだった。


「ええ、事実です。あなた達も目にしたのではありませんか? 魔の森で激しい戦闘があったのを」

「は、はい」

「あの戦いが本気になった魔王様とレイドさんでした」


 その言葉に絶句する人が多かった。

 なんせ魔の森にあった小高い山が幾つも消し飛んだのだから。

 自分達とは違う領域の戦いであったことに。


「そうですか。そこまでの実力者が魔族にもいたのですか……」


 どうやらレイドが魔族と勘違いしているようだった。

 魔族の中にも獣人などがいたりするが、レイドは人間だ。


 ベノムは答える。


「深い森の中で暮らしていたそうですよ」

「なるほど」


 レイドは口を開く。


「ベノムの言う通りだ。俺は人間たちが住む国の近くで住んでいた。多少人間と交流があったが裏切られた。だから俺は魔族が勝つために協力させてもらう」


 ベノムとレイドの嘘に魔族達は何故か納得し、これで人間に勝てると喜ぶのだった。



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