第7話:魔王戦Ⅱ
始まった第二ラウンドの戦い。
ぶつかった衝撃波だけで小高い山が崩壊し川が枯れ森が一部消し飛ぶ。
そんな人外な戦いが第二ラウンドのこの戦いでも繰り広げられていた。
現在戦っている森は空気中に魔素と言われる成分が豊富に満ちており、一晩で元通りになってしまう。そんな森であった。
レイドが魔力を乗せた拳をフランへと放つと、地面を抉りながらフランへと迫るもそれを魔力による障壁で防ぐ。
ビキッと嫌な音を上げる障壁だったが、次の瞬間にはレイドが障壁に向かって拳を殴った。
すると、あっさりと障壁は砕け散り拳がフランへと迫る。
「ぐっ!」
後ろに飛び魔剣でガードするもレイドの一撃は重く容易に吹き飛ばされ背後の山を崩壊させる。
追撃とばかりにレイドは魔力を乗せた拳による衝撃波を放つ。
「があっ」
衝撃波は直撃しフランは血を吐くも、すぐに体勢を立て直し魔剣を振るい無数の斬撃を飛ばす。
それに対してレイドは迫る斬撃を拳で払い退けフランへと迫る。
「魔剣が通用しないとは厄介な!」
フランはついそんな言葉を零してしまう。
「褒め言葉として受け取っておこう」
「ッ!? いつの間に!」
フランの背後へと移動していたレイド。
「――竜天覇」
手の平を回転させながらフランの腹部へと打ち込んだ。
「あっ、がぁっ!!」
衝撃波が体内を駆け巡り肋骨数本にヒビが入り、内臓の一部がやられるという結果となった。
思わずその場に膝を突き血を吐くフラン。
「まだだ!」
その言葉と同時にフランから膨大な漆黒の魔力が螺旋を描き天を衝いた。
しばらくして螺旋が収束しフランへと戻る。フランからは陽炎、あるいはオーラの様な漆黒のなにかが纏わりついていた。
レイドはフランの雰囲気が変わったことに気が付いた。
先ほど以上にフランの気配が大きくなったのだ。
「――ゆくぞ!」
フランの姿が掻き消えレイドの腹部に衝撃が奔り弾丸の如く勢いで吹き飛んだ。
「かはっ!」
肺の中の空気が外へと吐き出され、数百メートル吹き飛ばされたレイドは背後の岩に叩きつけられ地面へと落ち膝を突く。
「うっ……まさかこれほどの力を隠し持っていたとは。完全に予想外だった」
レイドは魔王の力を甘く見ていたことに対してそう呟いた。
これは自分も本気を出さなければならないと。
そう思った直後、フランが目の前に転移で現れた。手に魔剣を握り締めて。
「私を本当の本気にさせるとは。その力、認めよう! 貴様は強い!」
フランは魔剣を天へと掲げ叫んだ。
「――
上空で漆黒の太陽が現れレイドに向けて魔剣を振り下ろした。
ゆっくりとだがそれは確実にレイドへと迫っていた。
身を焦がすほどの熱。
「この太陽は敵を焼き払うまで燃え続ける。防げるものなら防いでみせよ!」
フランはレイドを仲間に引き入れるつもりなのに殺す気満々であったが、どこかでレイドが防ぐと信じているのだろう。
迫る太陽にレイドは見向きもせずフランをただ見据えていた。
落下する太陽は――レイドへと直撃した。
地面は熱で融解しドロドロとなる。その中心部にいるレイドはただでは済まないだろう。
どんなに強い魔族ですら骨すら残らずに消えてしまうのだから。
「仲間に引き入れるつもりがついつい殺ってしまったか。この技は被害がデカいからあまり使いたくはなかったが……それも仕方あるまい」
そう言ってレイドの生死を確認することなく出を向け戻ろうとした瞬間、聞こえるはずのない声が聞こえた。
「――どこに行くつもりだ?」
聞こえた声にバッと振り返るフランは、燃え盛る炎の中心部から強大な気配を感じ取った。今まで感じことの無い魔王である自分をも超える化け物じみた気配に、ぷつぷつと鳥肌が立つの感じた。
そしてレイドからあふれる真紅の魔力の奔流が漆黒の炎を消し飛ばした。
「な、何故生きていられる! 貴様一体何者なのだ!」
レイドは自身の力の80%を解放した。
その影響で仮面にヒビが入り――割れ落ちフランは素顔を目にした。
フランの言葉にレイドは答えた。
「俺は――元勇者のレイド・エーアストだ。さあ、第三ラウンドの始まりだ」
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