主人公の属性

主人公の属性について考える。ここで言う属性とはエレメント系や光闇といった物では無く、職業や種族、生まれの特異性なとのことである。

属性は単純で複数ある場合も関係が深いものや物語の構成上存在しうる物が良いと考えられる。読者にとって一番読みづらいのが、属性を付与しすぎた主人公だ。

例をいくつか挙げる。


例1 聖剣を使える勇者で過去に魔王だった転生体で神に育てられた実は魔族な主人公


例2 魔法士だったが能力が低く追放された結果天使の生まれ変わりと判明した獣人の上位種主人公


とりあえず色々組み合わせてみた。どこかで見覚えがあるような属性設定になってはいないだろうか。

ここで気をつけたいのは、物語が進んでいく中で、昇進したり進化したりする事で属性が増えていく事は読みづらくなる原因では無いと言う事だ。

つまりは例1でみると魔王だった時代から物語が始まり、神と出会い…などがしっかりと描かれていればそう言う物語なんだと説得力がある属性付与になるはずだ。

しかしその序章がなく、いきなりこれら全ての属性を盛られた主人公が登場してさあ読めと与えられても、共感はできないし立ち位置も分からないし、伏線なのか何なのか、必要な設定なのかなど、もやもやが読者の心に積もっていく事になる。

例2で言うなら獣人である事が世界的にどんな立ち位置で、天使や神は何柱いてどんな立ち位置で、魔法とはどうやって序列が決まっていて…などが物語中で明かされている中で、主人公の属性として付与されているならば物語の深さに繋がったり、主人公に共感できたりする部分ができるはずなのだ。

しかし多くの作品では天使や神を舞台装置のようにしか使わず、魔力や種類について深掘りせず、雑に属性を付与しては祭り上げる事をしてしまっている。これでは読者は置いてきぼりになるだろう。


属性が多くなるパターンとして一番多いのが背反する属性を重ね持つ場合だ。

一つの国では良いものとされるが、隣の国ではよく無いものとされるだとか、現代では忌み嫌われるが過去には英雄と呼ばれただとか。これらはあくまでも物語中で一つづつ明かされていく事で主人公の属性として物語の中核になるものだが、最悪の場合ではタイトルで書き並べるパターンも存在する。こういう主人公がいるからと明かされるのだが、読者からしたら だから何? となる事が多い。ご都合主義すぎる物語になってしまう場合や、付与された属性が全く物語に影響を及ぼさない場合もある。

これらのものも以前に書いた印象的な言葉:パワーワードを使いたいが故に起きることが多い。響きがよく、文字にしてあるだけで読者の目につきやすい言葉はあるのだが、それを物語として成立させることをせずに付与しておくだけにしてしまわないよう気をつけてほしい。


今回は属性の多さと使われ方について書いてきた。多い事=読みづらいでは無い。一度に付与される属性が多い=読みづらいなのだ。

英雄だとか魔族だとか、神だとか悪魔だとか、禁呪だとか聖句だとか。

強い言葉を属性として付与する際にはしっかりとしたバックストーリーを用意することを忘れないでほしい。それがあるだけで物語の完成度は格段に上がる他、読者にとっても読みやすく、また作者にとっても伏線を貼る事ができるようになるのだから。

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