ファンタジー世界と現代科学
ある世界に現代から転生する。その設定はもう広く使われている王道な設定となっている。その中でも全く科学が発展していない異世界に転生した際に、主人公だけが使えるパソコンや携帯端末が存在する作品がある。何の脈絡もなく特に世界観的な設定もないままいきなり発見し、使用する事があるのだ。その世界にとっては間違い無くオーバーテクノロジーであるのにも関わらず説明がない。そんな違和感について書いていこうと思う。
現代での所持物だった場合
現代で死ぬ間際に身につけていて、転移か転生した時に引き継いで持ってきてしまう。そんな設定で異世界に持ち込んだ場合を考える。この場合その物を持っている理由としてはギリギリではあるが納得できると考えよう。しかし、異世界でも使えると言う理由にはならない。なぜならほとんどの電子機器は電気によって動くのでしばらく使っていれば使えなくなると考えるのが普通だからだ。ソーラー充電ができるなどの説明があればこの問題は解決するのだが、それすら無いまま使い続けている作品はもはや違和感でしか無い。神様的な不思議な力で変質しているならその旨をしっかり書くべきだ。読者は能力者では無いので違和感は感じてもその旨を知る事はできない。違和感を感じた時点で作品を読む意欲が落ちる事は言うまでも無い。
第三者から転移時に与えられたものの場合
この場合では入手する経緯が無いまま使い出すともうその時点で読者は置き去りになる。神様がくれたとか望んだら手の中にあっただとか何かしらの理由があれば辛うじて分かるが、それでもなぜその物を作品に登場させなければならなかったのかと言う事が説明出来ないと、読者としては世界観に異物があるように感じてしまい、気味が悪い印章を持つ事につながる可能性が高い。
また、この場合においてもその物を使い続ける事の保証など無いわけで、どうやって動いているかなどのシーンを書かないと惰性で出現させたなんか便利な舞台装置になってしまう事に注意すべきだ。
例えば主人公の能力が表示されるような機能を持った携帯端末。ファンタジーの世界にしたのであれば教会や魔法による鑑定として能力値を出すべきだ。下手にオーバーテクノロジーを出してしまうと世界観が崩れてしまう。
そして何より気をつけなければならないのが、第三者による鹵獲の可能性だ。この可能性について言及している作品は意外と少ない。
これは持ち込んだオーバーテクノロジーの物を盗まれるなどして現地の人々に利用される可能性について考えられているかと言う点だ。盗む事ができない理由を書いたり、他人の目につかないように細心の注意を払っている描写があれば良いが、それすら無く作品中の所々で唐突に使い出しては場面が急に変わるなど、それ本当に周りにバレてないの?盗まれないの?と思われるような書き方はあまり良く無いと言えるだろう。
それとこれより下は完全な個人の意見だが、タイトルもあらすじもファンタジー世界への転移または転生であり、現実世界の干渉が無いように感じられた作品を読んでいる途中に、いきなり携帯端末が出てきたりパソコンを使い始めたりするとそれだけで冷めてしまう。うまく世界観を頭の中で再現して主人公の目的まで考え始めた所でそれをされると何とも言い難いムカつきと虚しさに襲われるのだ。何でそうなるんだと思うし結局ご都合主義を書きたいがための道具を適当に出しただけかとしか感じられないのだ。そこまでが良かった作品ほど落胆も大きくなる。
科学技術とは少し違うが、宅配サービス機能なる不思議能力を持った主人公の作品もいくつか存在する。これもいくつかの要点を押さえないと違和感だらけで読めた物では無い状況になってしまう。
誰がどうやって届けているのか。
対価はどうしているのか。
現実世界のものは消えているのか(物の転移なのかコピーして出現させているのか)
物の損傷はないか
能力の制限はあるのか
オーバーテクノロジーを輸入した事に対する世界からの拒絶反応などはないのか
その能力を使えるのは主人公だけか
など少し考えただけでもこれだけ思いつく。
これらを細かく書けと言うわけでは無く、能力を使う際に少しでも気にしている描写があったり、第三者からの反応を書いたりする事が大事なのだ。
現代の科学をファンタジーに持ち出すのはロマンがあり読者に興味を抱かせる大きなポイントとなる事は間違いない。だからこそ中途半端に持ち出したりその影響を書かなかったりすると大きな違和感や落胆をもたらす事になると言うことを考えてほしいと思う。
基本は理由と目的、それに加えて周囲の反応を描く事だ。持ってこれた理由、持ってきた理由、使える理由、使う目的。どれが欠けても違和感が生まれるため、もしそのような設定を使いたいのであれば細心の注意を払うべきだ。
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