タイトルを考える
作品のタイトルというものはとても重要だ。短すぎても長すぎても良くなく、作品を通してどんな体験が描かれるのか、もしくはキーワードは何かを簡潔にまとめたものがタイトルだ。しかし特になろうのランキングを見ると具合が違って見える。その事について書いていこうと思う。
まず、一般的にタイトルは会話文であってはいけない、という点についてだ。様々な作品が投稿される中で一番奇妙に見えるのがタイトル欄に会話文が入っている作品だ。もしくは会話文というより独白に近いものも多いが、誰かの視点で口から出た言葉がそのまま書かれていることがある。もはやそれはタイトルではない。
先にも書いたが、タイトルとは作品のキーワードや全てを総括したときに、読者に対して想像させるような何かであるべきだ。
それは単語であったり、最近では(と言っても10年くらいの間ではあるが)短文であることが多い。しかしそれはどれも誰かの視点の生の言葉ではない。短文であったとしても状況を表す第三視点の説明であったり、四季や風景を表した詩人的なものであったりする。
さて、独白や会話文がタイトルに適さないのは一般論以外にも理由がある。それはタイトル内で完結してしまうという点だ。タイトルは読者にとって一番最初に目に入る部分だ。だからそこに書かれていることで読者を引き込み、読みたいと思わせなければならない。しかし独白や会話文がそこに入ると途端に完結してしまう。つまりはこういうことが書かれた作品ですよと終わってしまうのだ。仮に逆転要素があったとしてもタイトル内で完結してしまうものを目にした時、読者は内容に一切興味がなくなってしまうことが多い。なぜならネタバレをされたようにその先を読む意欲が湧かなくなるからだ。
回避するならばどうするか、例を挙げてみる。まずは独白の例から。
「なぁ、中学を卒業したら付き合うって言ってたじゃないか!〜幼なじみと付き合えると思ったら別の学校に進んでいた件について〜」
よくある副題までタイトルに入れてしまう良くない例だ。すでにタイトル内で作品の内容について分かってしまう事が伝わるだろうか。5秒で考えたタイトルなのでチープであるかもしれない。これを改善するならばどうするかの例を挙げる。と言ってもこれも短い時間で考える上、内容から作るものではないので、実際はタイトルは仮決めしておき、最後に付け直すことをお勧めする。
「交差する心 Restart」
「非日常的な日常」
「勘違い男と遠回り女」
など、ふと思いついたものを並べてみた。内容が無いので伝えたい事が伝わるか不安だが、作品の本文がそのまま伝わらず、しかし全体的に見ればどのような方向で話が進むのか分かってくる物になっていると思う。長くなくてもどんな内容なのか、詳細を見てみたいと感じさせる事ができるかという点が重要であり、長くなるのは纏められていない証拠だと考えている。
二つ目は副題についてだ。多くのタイトルが長い作品において有りがちなのが、副題が本題より長いという点だ。もはやどちらが副題なのか分からない有様な事が多い。本来タイトルは作品を代表するワンフレーズであり、副題はあらすじや作品紹介の中に一冊単位、もしくは一エピソード単位でさらに細かくタイトルをつけるときに使うものだ。しかし多くの作品においてタイトル欄に副題まで入ってしまっている事が見受けられる。しかもタイトルより長い。
何が問題なのか、いくつかあるが一つは前に書いたようにネタバレになる事。二つ目に作品の程度を見られる事。最後に何に注目して読む作品なのかアピールできない事だ。一つ目は既に書いたので二つ目から深掘りする。
程度を知られるというのはどういうことか。それは「このようなタイトルをつけるような作品が面白いわけがない」というような感想を持つ人が少なからずいるということだ。そもそも読んでもらえないという事になる。読んでもらえれば筆者が伝えたいことや面白い内容を読者に伝える事ができるかもしれないのにも関わらずそもそも手に取ってすらもらえない。これは大きな損だと言える。簡単に言えば国語力が無いタイトルの作品は期待出来ないという事だ。
三つ目について、注目してほしい点をアピール出来ないとはどういうことか。
タイトルはキーワードを扱う事が多い。作品内での大事な言葉や状況、属性、経験、個人名や団体名など注目してほしい物や事をタイトルにつけるとそれだけで読者の集中する部分を作る事ができる。よく言われるタイトル回収という物だ。
しかし副題をタイトルに入れる事でこの注目してほしい点が二つ以上に増えてしまう。副題が長かった場合はもっと広くなる。
それによって何が起きるかと言えば、つまり何が言いたいんだこの作品は、と読者に思われる可能性が高くなるのだ。どれがキーワードなのかはっきりしないし仮に印象的な言葉が入っていたとしても副題がつく事でやはり二つ以上のキーワードらしきものが見え、読者にはっきりアピールする事ができなくなる。
解決策としては副題は小説の内容部分のタイトルの、一区切りごとにつける事が挙げられる。〜編などどんな分け方をしているのか分かりやすくするために使う事が重要だ。
タイトルは作品の顔であり、決める事が一番難しい部分だ。だからこそ安易に文章にしないでどのシーンなどのキーワードを使うか考えた上で付けてほしい。長く無いと読者が付かないなんて事はない。それは魅力的なまとめ方が出来ていないからであり、読みたいと感じさせる事ができていないだけなのだから。
タイトルを纏められていない作品の内容が纏まるとは思えない。一読者としてはそう思う。
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