第13話・埋蔵金の地図の在処。


お寺から学校は、目と鼻の先だ。

佐伯校長は学校にいた。

「おう帰ったか。暑い中ご苦労だったな」

 例によって、グランドの隅・涼しい木陰の芝生に、車座になって座り込んだ。


「初めまして、高山警察の高地と申します。早川係長から佐伯校長のお噂は伺っています。係長とも相談した結果、今回の事件に早月村が重要な役を果たすと見て、出張してきました」と、高地が挨拶をする。


「そうか、伸吾は元気か?」

「はい、最近は大分下腹が出て来たと、嘆いています」

「うはっはっは、それは、儂も同じよ。ここでは、ゲストハウスに泊ると良い。春彦、あとでご案内せよ」

「はい」

 神妙に春彦が答える。


そこへ、麻里先生が、麦茶とグラスをお盆にいれて、運んで来た。

「麻里先生、あとで高地君が、ゲストハウスに泊る連絡を頼む」

 と佐伯校長が言って、

「まずは、冷たいのを頂こう」

 と麻里先生のいれてくれたグラスを取って、飲み始めた。


 一息つくと、美結が姿勢を正して、

「では、高山市と亀谷集落で調べた事を報告します」

 と報告を始めた。

途中、安子・春彦・正宗も代わって報告をした。


(これは、武士が上司に報告する姿そのものだな・・)

 その様子を黙って眺めていた高地は感じていた。

校長と生徒の話すのを聞いて、他校にはない親しい信頼関係が感じられたが、任務を与えられて、その結果を報告する姿は、凛とした時代を感じさせる上下関係そのものだった。


「ふむ、やはりそんな事だったか・・」

と、全ての報告を聞き終えた佐伯校長が言った。


「校長、私たちニャンコチームが命じられた事は、仏像盗難事件の真相を解明せよ。でした。これで、任務終了と考えて宜しいでしょうか?」

 背筋を伸ばし上体を軽く前に倒して、威儀を正したままの姿勢で美結が問うた。

美結と正宗の姿勢を、安子と春彦も真似ている。


「そうじゃのう。真相は分かった。これで一応当初の任務は達成したのう。よし、約束通り四人の夏休みの宿題は、これで無しじゃ」

「やったー」

と、4人が喜びの声を上げ、立ち上がって飛び跳ねた。


「じゃが、それで満足か?」


 校長の問いに、再び威儀を正した美結が、

「いえ、心残りです。加東を捕らえるまでやりたいです」

 正宗が美結に並んで威儀を正した。安子と春彦も顔を見合わせたが、やはり並んで威儀を正した。


「よし、やって見ろ。許す」

 佐伯校長が厳かに告げる。


「はい」

 と返事した4人に、校長が聞く。

「だが、これからどうするな?」

 4人は、丸く輪になって何事かしばらく相談している。


「高地君は、なにか聞きたい事はあるかの?」

 問われて、高地が頭の中を整理して、

「これは、ニャンコチームが帰ったら校長に聞こう。と話していた考えなのですが、」

 と前置きして、話し出す。


「亀谷の斉藤氏は、佐伯校長が仏像に隠された何かを知った筈だと、言われていました。それは、本当でしょうか?」

 ニャンコチームの4人も、振り返って校長の返答を聞こうとしている。


「そうか、斉藤氏に見抜かれていたか・・」

「やっぱり、何かあったのですか?あの仏像に」

 麻里先生も聞く。


「うん、あった。なにぶん古い像なので方々が欠けていて、その部分をパテで補修していたのじゃ。そしたら底がパカリと取れて、中から古い巻紙が出て来おった」


「その巻紙は、今何処に?」

「儂が取って置いておるよ。学校にある」


「そ・それは、埋蔵金の在処を示すものなのですか?」

 春彦が興奮して聞く。


「まあ、そう言うたぐいの物じゃなあ・・」

 言葉を濁す佐伯校長。


「校長。だとしたら、大変な物では・・」

 と僅かに取り乱した麻里先生が言う。


「百万両の埋蔵金・・・」

 春彦が呟く。


「まあ待て、麻里先生までそんな戯言を信じているのか?」

「だって、まだ発見されてないって言う事なので・・」

 麻里先生が呟く。


「校長先生、埋蔵金は無いのですか?」

 春彦が尋ねる。


「少しはあるかも知れぬ。じゃが、そう大騒ぎするほどの額は、無かろう」

「どういう事ですか?」

 安子も聞く。

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