そして完成へ……。

 光が見えてからの再々チャレンジは、結果から言うと成功です。なので、ここからが本番です。本番なので、ちゃんとカカオ豆から作ります。

 材料はカカオ豆一〇〇グラム。カカオバター五〇グラム。砂糖七〇グラム。スキムミルク六〇グラム。

 まずはカカオ豆をローストするのですが、カカオストアで買ったものはロースト済みなので、この工程は飛ばします。

 次にカカオ豆の皮を剥きます。手だけでもできるのだけど、めちゃくちゃ大変です。わたしは最初、手だけでやって泣きました。ナイフで切れ目を入れると楽になるのだけど、それでも一時間かかってます。

 皮を剥いたカカオ豆をフードプロセッサーで細かく砕きます。粉末状になったカカオ豆をいつものように湯煎──は、まだしません。

 カカオ豆からチョコレートを作った本やネット記事を読むと、決まり文句のように必ずでてくる言葉があります。完成したチョコレートは「少しざらついた」ものだった、と。

 ざらついてしまうのは砕いたカカオ豆が粗いからで、きめ細やかなカカオマスが作れればチョコレートのざらつきはなくなるはずです。

 フードプロセッサーで細かくしたカカオマスをすり鉢ですり潰してふるいにかけ、残りをまたすり鉢ですり潰してふるいにかける、その繰りかえし。

 フードプロセッサーを使いながら、きめ細かいカカオマスを作ろうとしたんですが、わたしは途中で妥協しました。三、四時間くらい続けたけれど、「きめ細かい」までにはなりませんでした。

 できあがったカカオマスを砂糖とスキムミルクを混ぜ合わせて湯煎にかけます。カカオバターを少しずつ加えていき混ぜます。しばらく溶けないけれど、やがて餡子のような状態になります。それまで根気よく混ぜていきます。

 餡子状になっても根気が必要で、時間をかけてひたすら混ぜていって、ようやく液状になります。液状になると、やっとチョコレートの姿がイメージできるようになります。正確に時間は計っていないけれど、湯煎にかけてから一時間以上かかってます。

 液状になってから──あ、しまった。あらためてレシピを見たら、工程を一つ飛ばしてる……。

 実際にわたしはしていないのだけど、舌触りを確認しながら目の細かいざるで漉したり、すり潰したりするそうです。

 さらに滑らかさをだすために時間をかけて練りあげていきます。これは一応やってます。コンチングと呼ぶこの作業は、市販のチョコレートだと数日かけるらしいけれど、わたしは適度に切りあげました。

 最後は調温。ボウルに氷水を張って、液状のチョコレートを二十五度まで冷やして、また湯煎で四十五度にします。あとは型に入れて、冷蔵庫で冷やすだけ。

 作業をはじめてから冷蔵庫に入れるまで、ざっくりと十時間。しかも途中で妥協したり、忘れてしまった工程もあるのでこれでも短い時間のはずで、ちゃんと作ったらどのくらい時間がかかるのか、あんまり想像はしたくないです。

 誰だよ市販のチョコを溶かして固めただけなんて手作りなんて呼べない、手作りチョコレートを名乗るのならカカオから作ってこそだろなんて言ったのは。って、わたしだよ。

 十時間以上かけないと完成しないものでないと手作りと呼べないのなら、それは現実的ではないというか、あまりにもハードルが高すぎます。何かをするときにハードルは高いよりも低いほうがいいはずです。市販のチョコレートを溶かして固めたものも手作りなんだと思い直しました。

 さて最後に。

 十時間かけてカカオ豆から作ったチョコレートはちゃんとチョコレートの味がしましたが、やっぱり少しざらついていました。

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カカオ豆からチョコレートを作ったというエッセイ。 ひじりあや @hijiri-aya

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