ある手帳の中身
きっと読む人はいないだろうから、どういうふうに書くか悩むけれど、普通に話しかけるような口調にするわ。アンネの日記みたいにね。さて、私はこの度自殺しようと思う...というか決定事項になったのだけど、生きている間ずっとしまっていた本音を、どこかに1度だけでもさらけ出してみたいと思ったの。なんでかしらね。17年間ずっと我慢できたのに。自分なのに自分のことが分からないのかって?そうね。私は私が分からないわ。だから推測するわ。私は私を。
きっと私は怖かったのよ。「私」という存在がいなかったことにされるのが。お墓は残るでしょうって?もちろん私が生きた痕跡は残るでしょうね。でも「私」という人格、「私」という精神が残るとは限らないでしょう?私は特に地を出さずに生きてきたから、このままじゃ「私」という個は死んでしまう。人は忘れられた時が本当の死だというでしょう。忘れられるどころか覚えられてすらいない「私」という人格は、肉体的な死と同時に死を迎えてしまう。それがどうしても怖いのよ。まあ私の勝手な想像だけれどね。ともかくこれが今私がこんな事を書いている理由。多分ね。
肝心の自殺についてだけれど、こちらは理由をはっきり答えられるわ。「私が私であるため」。意味分かるかしら?友達はそこそこ、両親とも妹とも間柄は普通。恋愛は今してない。趣味はなし。
私...未練がないの。生きていたいという理由がないのよ。これは由々しき事態だと思ったわ。だって、未練がないってことは、「私」の存在理由がないってことじゃない。個性がないのよ。私が私である理由がないのよ。だから私は考えたわ。私は何をもって私であるのかを。
結論____「私が私である理由がないこと」が私であるということなのではないか、という考えに至ったわ。では私が私である理由がないこととはどういうことなのか。その答えが自殺だったの。飛躍していると思う?でも私にはこれしか思いつかなかった。
こんなものかしら?正解なんて分からないけれど、私が自殺を選んだ理由は上記の通りよ。後悔はないわ。
私は、私たらんとするために死ぬのよ。
とある少女の話 雨水 @amamizu415
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