「何が天国よ」


「天国だぜ。これでようやく、悶々とする日々から脱出できた」


「小さいって、そんなに大変なの?」


「女にはわかんねえよ。分かる必要もない。そっちの目は、どうなんだ」


「問題があるわ」


「まじか。じゃあもう一個も移植して」


「そういう意味じゃない。色が、反転してるの」


「それじゃあ、手術は」


「うまくいってるわよ。これは、副次効果みたいなものなの。日常生活にも特に支障はないわ」


「どういうことだ?」


「色がね。違うの。私が自分の目で見てたときと。青と赤が」


「青と赤」


「反転してるの。青が赤に。赤が青に」


真っ赤で、綺麗な、空。


「これはこれで、綺麗よ。ありがとう。もうひとりで歩けるから。下ろして」


「ああ」


「退院、おめでとう。はじめての外は、どう?」


「ちょっとこわい」


「そっか。じゃあ、手を繋ぎましょうか」


「うん」


「恋人繋ぎにしなさいよ」


「ええ」


「さっきまで私を抱えて歩いてたでしょ。今さら何を」

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青と紅の反転 reW 春嵐 @aiot3110

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