第21話 帰道

 見慣れた道も昼と夜では姿を変えるというから、公園の紫陽花も変わったかとのぞき見れば、何の波乱も騒動もない。花の夜は早い。

 花より大きく、愛嬌あいきょうの声をあげて、ボールを打ち合う親子だけが残っていた。

 白い紫陽花も眠っているようだ。何も犯さないよう静かに過ぎる。

 明日、また陽が昇れば目覚めるだろう。

 今日、四五歳になった。六月の初めだ。

 勤めていた会社を去年、クビになった。無職のまま誕生日なんかを迎え、今日で四五歳。

 十年も住んでいる安アパートの前に、「児童公園」などと銘打たれた遊具場がある。遊具場というのは子どもの遊び場だ。

 午前十時にもなると、どこから来るのか、保育園の子どもらが大挙押し寄せ、泣いたり叫んだり笑ったりで年中、花でも咲いたような雰囲気になる。




(擱筆)


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あじさいのオマージュ2 しお部 @nishio240

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