第2話
「魔王リーナ!オレがお前を倒す!」
きたーーーー!オレがきたーーー。
オレ、知ってる。このあと魔法を撃って剣で戦って腹部ドスッって!!というか、オレはここにいるのに、あそこにもオレがいる。あいつもオレなのか?
オレは立ち上がり、もしかしたら話せばわかるんじゃないかと期待してオレに話しかけようとした。
期待は、すぐに崩された。
「どう、私になった気分は?」
目の前の《オレ》の口からでた一人称は、「私」
目の前にいる《オレ》の中身は魔王リーナだった。
「あら、少し時差があったのかしら?私はいま私になったようだけど。あなたはいつからかしら。そんな服でそこに座るなんてやめてほしいわぁ」
「いや、知らねえよ!オレの体で変な喋り方するんじゃねえ。っと、違うな今すぐもとに戻せ!」
オレは空を掴むと魔剣が現れた。聖剣を呼んだはずなんですけどー? 聖剣は《オレ》がかまえていた。
「いやに決まってるでしょ。殺されるのがわかってて戻すバカはいないわよ。さてと、永遠に殺される役になってあなたはどれくらい精神がもつかしら。一回で死んじゃうなんてことないといいんだけど」
クスクスと笑う《オレ》のなかのリーナ。
「誰が殺されてたまるか!」
オレは魔剣を構えて、魔法詠唱をはじめる。
「じゃあ、その剣で私を刺すの?勇者さまが魔王に負けちゃうね」
「オレの仲間が、きっとわかってくれる」
「そう、仲間を信じているんだ」
急に寂しげな表情になったリーナが、詠唱を開始した。
***
「何か、言い残すことはある?」
クスクスと笑いながら《オレ》が問いかける。腹部から、ポタリポタリと血が流れ落ちている。
あぁ、あの刻がきたのか。
「別に……」
「そう」
つまらなさそうに《オレ》は呟くと、聖剣に力を込めた。
《オレ》の後ろから、足音が聞こえてくる。
「見ない方がいいかしら」
聞こえるか、聞こえないかわからないくらいの声で、リーナは呟くと。
オレの意識はそこで途切れた。
***
海のなかを漂っているような感覚のなかで、前回とは違い、何かが語りかけてくる。
「つまらない。君もハードモードすぎてクリア出来なさそうだよね。少しだけ僕が手伝ってあげるよ」
一体なんのことなんだろう。わからない。けど助けてくれるなら手伝ってくれ。
オレは、声のする方へと手を伸ばした。
ずるりと引っ張りあげられる感覚がとても気持ち悪かった。
勇者レアードは魔王リーナに首輪を結われる。 花月夜れん @kumizurenka
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