彼女視点

 彼が草食過ぎて、しにそう。


 しかたないから、この前の風呂上がり、はだかでうろついてみた。彼は、私のはだかをみても、特に何も感じないようだった。


 身体をびしょびしょにして、バスタオルで彼に身体を拭かせた。彼は器用に私の身体を拭いた。それだけ。


 寝起きもはだかでいることにした。彼と一緒に寝た。何も起こらず、それどころか、寝る前は歯を磨いてくれて、朝起きると顔を洗ってくれた。


「うおおおおおっ。わたしは猫かっ」


 くそが。なんだこいつ。せいよくがないのか。


「あっ、あっちっ」


 しまったっ。浴室温度ボタン連打してしまった。熱い。43℃って。


「あちちち」


 お風呂から上がった。


 鏡に映る、自分の身体。


 均整のとれたプロポーション。化粧しなくても綺麗な顔。この全ては、彼のために作り上げた。


 いやまあ、本職は顔隠してゲーム実況する配信者なので、顔も身体も関係ないんだけども。


 彼には、在宅のネット関係の仕事と言ってある。配信は、彼が事務仕事に行っている間に行う。自己顕示欲と承認欲求が良い感じに高くてたまたま良い声だったので、通帳の中身はゼロで一杯になっていたりもする。


 しかし。


 お金では買えないものがある。


 彼氏の、愛情。


 くそっ。


 彼女がはだかでうろついて、寝るときもはだかでいる意味を考えろよ。


「いやあ、いかんいかん」


 目が、真剣ガチになってしまう。私は、とにかく、自力で、彼のほうからそうしてくるように、仕向けなければ。


 自己顕示欲と承認欲求は高いけど、それは正常な高さであって、自らの意思や強情な要請をしようとは露ほども思っていない。女性的な奥ゆかしさこそ、綺麗な顔と整った身体の秘訣。


「でもはだかだけどなあっ」


 洗面室を出る。走って、リビングへ。


 彼。


 牛乳を持って立っている。


 今日こそは。


 今日こそは、あなたも牛乳ばりに絞らせてもらいますからね。


「お風呂上がりましたあっ」

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お風呂上がりにうろつく彼女 春嵐 @aiot3110

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