第3話 新たな世界への幕開け
第3話 新たな世界への幕開け
「なんで爆発させちゃったの?」
一年A組の担任、有賀先生がじろっとこっちを見ながら言った。ていうか、すげー怖いんだけど。頭にはサングラスをつけていて、オレンジのtシャツに虎柄のベルト、茶色っぽいズボン、そして何よりその容姿が、いかにもヤクザっぽい。なんでサングラスつけてんだよ、室内で何を眩しがってんだよ。
「僕は、止めたんですけど…」
「君たちは?」
有賀先生は音先輩と馬場先輩に向かって聞いた。
「スタートの時の音に慣れてもらおうと思って。」
「慣れるも何も誰も陸上部に入ってないでしょ。」
「確かに。しかしそこに火薬があったら爆発させたくもなるでしょう。」
「何がしかしなんですかね?」
「これはもう職業病ならぬ部活病みたいなもんですよ。」
「君たちは陸上部なんだよね?」
「陸上競技部ですよ、要するに、陸上で競技をする部活。火薬を爆発させるのだって、立派な競技でしょう?陸上で競技。なんの問題もな…」
さすが、というべきか、先輩2人は堂々と有賀先生と渡り合っていた。しかし、やはり調子に乗りすぎたのか、ついに先生の雷が落ちた。
「ふざけるな!お前達は自分が何を言っているのか分かっているのか!調子に乗るのもたいがいにしろ!」
しーんと、沈黙が辺りを包む。
「教室で、教卓で火薬を爆発させるなど言語道断!危険だということくらい分かるだろ!」
「いや、危険ではないですよ、ちゃんと安全には考慮して…」
「黙れ!とにかく、お前ら陸上部は昼休み及び放課後の勧誘は禁止。部活動も1週間の謹慎。毎朝掃除をしろ!それから反省分を書いて提出。これだけで済んでありがたいと思え!」
「そ、そんな、新入部員を勧誘しなきゃ、僕が部活をやめられないじゃ…」
「まだ何か言うようだったら廃部にするぞ。」
「あ、ホントですか。じゃあそれでお願いします。」
目の前に拳が見える。ん?これは誰の手だ?鈍い衝撃とともに、頭の痛みとともに、俺達は職員室を追い出された。
「な、なんで僕が殴られなきゃいけないんですか。どう考えてもおかしいでしょう。あの有賀、頭おかしいんじゃないですかね?!」
俺は殴られた頭を押さえながら言った。結局、あの後俺達は残念ながら廃部を逃してしまい、新入部員の勧誘は禁止となった。なす術もなく、今は部室でグチを言い合っていた。
「いや、おかしくはないと思うぞ。」
「普通あそこでお願いしますとは言わんだろう。」
「いや!だいたい元はと言えば先輩達が火薬爆発させたのがいけないんでしょう!」
「そこなんだよなぁ。なんで怒られたのか、俺には正直見当がつかん。マコト、分かるか?」
「いいやまったく。」
「あなた方は一回幼稚園からやり直した方がいいんじゃないですかね!」
先輩2人はわけが分からないといった顔で寛いでいる。くそ、このままではまずい。とりあえず、なんとか新入部員ゲットの方法を考えなくては。
「まあそうかっかするな、北島。ほら、これやるから元気だしな。」
「…なんですか?これ。」
「見ての通り、火薬とトンカチだが。」
「ケンカ売ってるんですか。」
「それで火薬を叩いてみろ。気持ちいいぞ。」
「そんなわけあるかぁ!こんなことしたってね、元気でるわけないでしょう!」
言いながら俺は、トンカチを思い切り火薬にぶつけた。パン!と威勢のいい音がする。何もかもを忘れ去れてくれるような、気持ちの良い響き。
「…」
「ほら、良かっただろ?」
「…いや、まあ、普通というか、まだあなた方に染まってはないですからね?!僕はまだ普通ですからね!ただ、予想より良かったというか…」
「な、物は試しなんだよ。あれだけ部室に入るのも嫌がってたのに、今じゃすっかり寛いでいるじゃないか。」
「え?…あ、そうだ!ここ危険なんだった!すみません僕帰らせていただきます!」
「火薬まだあるけどいいのかー?」
「…、10個下さい。」
パンパンパンパンパンパンパンパン
「だがマコト、どうする?」
「んー、昼も放課後も勧誘ができないとなると、これは相当厳しいな。」
「俺達が勧誘するよりさ、一年の北島がやった方がいいんじゃないか?同級生だと結構気楽に話せると思うし。」
「ああ、確かにな。じゃあ北島に任せるか。」
パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン。
「じゃあ北島、任せたぞ。」
「え?」
「俺達はもう帰るわ。じゃあ新入部員、よろしくな。」
「へ?ちょ、待ってくださいよ!僕1人でですか?!」
「ああ、3人集めて、この部活辞めるんだろ?じゃあせいぜい頑張ってくれ。」
「ちょ、マジかーーーー!」
爆発系青春ラブコメディ @abcdai
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