鳩のポンタ

コヒナタ メイ

第1話

 鳩のポンタは白っぽい灰色の少し太った鳩でした。ポンタは公園に住んでいました。

 ポンタには他の鳩と違うことが一つだけありました。それは、ポンタは空を飛ふことをやめた鳩だったのです。

 ポンタは鳩なのに高いところが苦手で、飛ぶのが好きではありませんでした。幼い頃はポンタもお母さんと一緒に空を飛んでいましたが、公園にはいつもやさしいおばさんがエサを持ってきてくれるので、空を飛んでエサを探しにいく必要がなく、いつしかポンタは空を飛ぶのをやめてしまいました。空を飛ばずに歩いているポンタを見た公園の管理人のおじさんが管理人室の近くに廃材を使って安全な巣を作ってくれました。ポンタは朝からやさしいおばさんからもらったエサを食べ、夜には管理人のおじさんの作った巣で寝て過ごしました。飛ばなくなったポンタを心配したお母さんは、なんとかポンタに飛んでもらおうと励ましたり、誉めたり、怒ったりしましたがポンタが空を飛びませんでした。お母さんはポンタのことを心配しながらも、ポンタが空を飛ぶことをあきらめてました。

 ある日、いつものようにポンタが公園の広場でお母さんや仲間たちといっしょに、やさしいおばさんにもらったエサをついばんでいると、中学生くらいの2人の男の子がやって来ました。男の子たちは手に空気銃を持っていて、鳩をめがけて空気銃を発射しました。「パパパパパパパ」空気銃から放たれた球は地面に当たり、驚いた鳩たちは一斉に飛び立ちました。ポンタだけは飛ばずに必死で走って逃げました。やさしいおばさんは男の子たちにやめるよう言いましたが、男の子たちは笑いながらポンタを追いかけ、ポンタに向けて空気銃から球を放ちました。「パパパパパパパ」たくさんの球がポンタの足下で跳ね、1発がポンタの足に当たりました。「痛い!」ポンタは叫んで歩けなくなりました。男の子たちはポンタに近づき、ポンタの身体めがけて空気銃の引き金を引こうとしました。その時、お母さんが空から男の子の近くまで降りてきました。お母さんは男の子たちがポンタへ攻撃できないように男の子の回りを飛んで邪魔をしようとしました。男の子たちは飛んでいるお母さんに向けて空気銃を撃ちました。

「逃げなさいポンタ!飛んで逃げるのよ!」 

 お母さんは叫びました。男の子はお母さんに向けて空気銃を撃ち続けていました。

「危ない、このままではお母さんがやられてしまう。」

 ポンタはそう思うと大きく羽を広げて力一杯羽ばたいて飛び上がりました。そして、お母さんを空気銃で撃っている男の子たちに向かって飛んでいき、耳を突っつきました。

「痛い、痛い」

 ポンタに耳を突かれた男の子たちは、ポンタたちから走って逃げ、公園から出ていきました。


 ポンタは飛びながらお母さんに言いました。

「お母さん、ありがとう。」

「いいのよ、ポンタ」

お母さんは言いました。

ポンタとお母さんは、楽しそうに空を飛んでいました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鳩のポンタ コヒナタ メイ @lowvelocity

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ