第2話 おっす、オラ田中進
それは5月の事だった。
高校の敷地内に咲く桜も散り散りになり、枝には緑豊かな葉桜が現れ出していた。
生徒らはよそよそしい時期をくぐりぬけ友達というものを作ろうとそれぞれが手を尽くし努力していた。
男子一八人。女子十七人のクラスメイト。三五人の見ず知らずの人間をまとめて箱に詰めたこの教室。
一見どうって事のない青春という言葉で片付けられそうに思れるが、その実一人一人生々しく光と闇を孕みつつも、それでも生徒諸君と一縛りにまとめ上げられ壇上に掲げられる。
そのメダカの学校さながらの無理の行き届いた教育思念の中、生徒諸君らは俺こそが、私こそがと頭を捻りこざかしい自分こそが一つ頭抜きんでてるのさ?と言ったたわけごとを言葉の裏に隠し相手を牽制していった。
僕はそんなのごめんだ。田中進はそう思った。田中進はそんなものには興味が持てなかった。彼にあるのは自分の手の中にすっぽり収まるだけの興味。
十五歳の彼はとるに足らない学園生活を今この場で終わらせた。
僕は寝る。卒業まで寝るんだ。
彼の意思は固かった。だが、同級生達の意思も固かった。俺たちは求めているんだ。俺たちを認めさせる事を。その手段を。俺達はちょっと違うんだ。お前とはな。と。
独特な校舎の匂いも馴染んできた。臭いって程じゃないがいい匂いって事もない。きっと何年か経って高校生活を思い出したらこの匂いも同時に思い出すんだろうな。
この時は田中進もそう思っていた。しかし、しかしだ。世の中はそんなに都合よくなかった。進むべき道は邪魔をする輩で溢れている。みんな嫌いなんだ。他人が思い通りに生きるのが。
今は眠るがいい。田中進。君のその道は邪魔な輩で溢れたいる。今はまだ見えないだろうが。だから寝れ。田中進。明日などあるかどうかもわからないのだから。
それ、万死に値な! ウォヴンゴロワ貞三 @mojiri
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