第1話 生まれと持つ者の重み Ⅰ
さて、前回国王を殴ってしまった記者兼作家のチェイスです。
これから断頭台に向かいます、ということは・・・・・・・・・・なかったが国王が私、いや飛行隊みんなが行方を追っていたクリス中尉だった。
どんなロマン小説だよ、今時そんなチープな御伽噺なんて浮ついた中学か高校のお嬢様にしか売れないよ。
まあ、そんなことはどうでもいいわ。
問題なのはこれから聞かされる話の内容だが、雰囲気からして成り上がりの平民ではないことが明らかなんだが、それはいいのか。
名前すら売れていない作家でもあり、記者である私がまとめられるだろうか。
しかも、国王の回顧録という責任重大なものを書くという、これなんていうクソムズなパズルだよ。
まだ、爆撃機で濃厚な弾幕を生きて潜り抜けろという方が私は出来るぞと訳の分からないことを思ってても何も始まらん訳なんだけども。
正直、私はこいつを飛行隊長の実家に引きずってy、いや、やめておこう侍従長が私を超睨んでいる。
まあ、飛行隊長の実家に電話するのは確定だけどね、ちょっと彼には痛い目にあって貰おう。
うん、きっと楽しい再会になるな(棒読み)
あっ、彼がちょっと震えた。
ちっ、勘のいいやつめ、だが私に姿を晒した時点で遅いのよ。
フハハハハハハハッ、私の初恋を散らしたツケを喰らうがいい!!!
『なあ、チェイス軍曹。碌でもない考えているよね』
ふっ、当たり前ではないか。
「まったく、そんなことを考えておりません。そして、もう軍曹ではありませんよ。中尉、いえ、国王様」
まあ、そんな簡単には言うつもりなんてありませんから。
『まあ、いいけど軍のよしみだ。もっとフランクになってくれると助かる。話にくいんだ。で、国王様言うのはよしてくれ。チェイス。」
ちょっと面白いから隙あらばいじってやろうと思いながら本来の目的に戻った。
「さて、急で悪いけれども質問させてもらうけど、いい?」
了承を得るときになったことを聞いたが、簡潔にまとめると取材の許可された理由が国民が自分の過去を知りたいという空気を感じて答えることにした。
そして,なんで自分かは、記者兼昨夏をやっていたというだけではなく、軍時代の部下なら大丈夫だろうという信用の下で今回の件が実現した。
『まあ、話す前にもう一人同席する。軍と王室庁のクーデターの詳細を知っている。いいか。』
「ええ」
了承してから色んな意味で後悔することになったことは私はこの時知らなかった。
そして、その直後に取材を始めたが情報量の多さで頭が思考することを放棄してしまった。
本当に正当な準王族の「ラーデル・カーク」本人とは信じられなかった。
だって、国民のほとんどが忘れていたけども、彼は爆殺されたはずの人間だった。
てっきり、本人を語っている別の何者かだとばかり思っていたからなおさらでだった。
信じたくはなかったけど各準王族にしか渡されず、伝承されている紋章のペンダントを持っていた。
中には本人の指紋が刻まれているからであり、非常に信用度が高くて本人を証明するには十分な代物である。
これはどこかに行くときに必ず指紋が一致するかチェックされるから盗んでも意味を成さないし、複製するにはその準王族の領地でしか産出されない宝石を必ず使う必要がある。
この宝石は厳重な管理下に置かれており、本物には肉眼では分からない刻印がされているので、どう頑張っても複製することは不可能である。
だが、それはクーデター後の後処理でその信用度が根本から否定される大事件があったが、後で記述する。
さて、取材の主役であるクリス中尉に戻そう。
ラーデル家15代当主の子で準王族の中では珍しい5人兄弟の長男であるが、ラーデル家はアイルロ共和国の国境沿いに位置するため立派な武人一族である中で珍しい頭脳派で戦いより外交が得意であったが、彼は一族の中では冷遇される原因になった。
一族の中では体は弱くてプレッシャーですぐに体調不良になっていることが多いことも相まって、長男であったが初めから当主になることを期待されていなかった。
だが、冷遇とは書いたが決して愛されなかったわけではないが、次期当主になれないのに長男としての責任だけを負わされていた。
内政に外交を担っていた。
成功すれば次期当主の成績で、失敗すれば彼の責任である。
17歳の時の流行病で意識を失ったときは見捨てられたかのような待遇で最低限の治療しか受けられなかったが、この時は奇跡に死の淵から回復した。
さらに奇跡は続いた。
流行病で一族の中で感染したのは彼だけであったが、彼の行った政策によって他の準王族の領地内では死傷者の数が最低であり、被害を最小限に留めたなど実力を遺憾なく発揮したことから、領民からの支持は圧倒的であった。
ラーデル家は軍事にしか興味がないことから脳筋一族と影ではバカにされており、実際に内政と外交は領民で才能あったものがしていているのが現実である。
ある意味、前衛的な統治であるがやはり丸投げ政治であることに変わりはない。
人生の転機は18歳の時で王女殿下の婚約者の選定で、次期当主候補であった二人は選ばれずに彼が指名されたという出来事が起きた。
表舞台に出ることが多かったこととこれまでの手腕が周知されていたのが奏していた。
次期当主候補でもない人間が選ばれるのも異例中の異例でもあり、それが他の準王族や貴族、そして家族との亀裂を生むきっかけになってしまった。
彼自身は王位などに興味もなかったのにもかからわず、選ばれたことを呪っていた。
なにせ、これがのちに彼を殺める事件への始まりであったからである。
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続く・・・
国王陛下の回顧録 @alphadead
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