サティスファクションの決闘

 シーシードーレー

 レードーシーラー

 ソーソーラーシー

 シーッララーー…


 サティスファクションタウンの外れの荒野。

 フジワラはここで神崎ひなたを待つ。

 世界を赤く染め上げる黄昏時。

 喜びの歌が響き渡る。

 神崎ひなた19歳JKは縦笛を吹きながらセーラー服を風に揺らせてこちらに向かってきた。


 ニンジャと魔王の決闘が始まった。


「ドーモ、サイタマ=フジワラです。」

 挨拶を重んじるニンジャは、必然として先手を譲ることになる。

「黒炎玉。」

 黒い火球がフジワラを襲う。フジワラはそれを難なくかわし神崎ひなたの正中線を捉えた。

「崩山冲捶!!」

 フジワラの拳が神崎ひなたを貫く。神崎ひなたは崩れ落ちた。


 シーシードーレー

 レードーシーラー

 ソーソーラーシー

 シーッララーー…


 荒野には喜びの歌がなり続けている。もう1人の神崎ひなたが空間を切り裂き表れた。

「ドッペルゲンガー。魔力を全て使用し自分の分身を作り出す。」

「そして、私の魔力はゼロ。インフェルニティが発動できる。」

 周囲が闇に染まりだす。フジワラは走り出した。

「アクセルシンクロ。呼び覚ませ、我が魂。ニンジャソウルオーバーリミット!!」

「漆黒の帳が降りし時、冥福の扉は開かれる。舞い降りよ、闇よ。ワンハンドレッド・アイズ。」

 フジワラのアクセルシンクロが先んじた。フジワラのエモーショナルとニンジャソウルが共鳴する。

「裡門!!」

 フジワラの強打が炸裂した。


「インフェルニティはその程度では止まらないよ。」

「私の狙いはひなたを止める事ではない。インフェルニティの暴走だ!」

 暗闇に浮かぶ数多の目が神崎ひなたを睨む。闇が神崎ひなたへと収束していった。

 しかし、神崎ひなたは平然と立っていた。

「何故だ?裡門で魔力は回復したはず。」

「ハッピーエンドはない。と言わなかった?」

「私のダメージは魔力を全て消費することで無効にした。」

 またインフェルニティが来る。

「よって、私の魔力はゼロ。インフェルニティが発動できる。」

「死者と生者、零にて交わりし時、永劫の檻より魔の竜の息吹きは放たれる。インフェルニティ・デス・ブレス!」

 神崎ひなたを中心に黒い煙が辺りを覆う。この煙に触れた物は崩れ出した。

「神崎ひなた!!ひなたんを返せ!!!!」

 フジワラは神崎ひなたに向かって走り出す。その走行スピードは光の速さに迫る。

 闇と光が衝突し混じり合う。暗闇は晴れ光は明かりを失う。荒野は黄昏色を取り戻した。


 藤原埼玉(敬称略)と神崎ひなた19歳JKの二人は荒野に並んで倒れていた。

「埼玉(敬称略)、ハッピーエンドは訪れないって言ったでしょ。」

「ひなたん、もうどうでもいいよ。疲れた。いっしょに帰ろ?」

 二人は手を握る。夕陽は水平線へと落ちていった。


 サティスファクションタウンから魔王の脅威は取り除かれた。神崎ひなたの癇癪で追放された者達も街へ帰ってくる予定だ。

 決闘の後、あの二人が何処へ行ったのかを知る者は誰もいない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハッピーエンドは訪れない あきかん @Gomibako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る